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すが、これらの仕事を避けるというのです。老人に3Kがあります。老人の3Kというのは、まず臭い、子供たちは老人を臭いと言います。それから口やかましい、くどいです。心あたりの方もおられると思いますが、こういう理由から若者に敬遠されています。
友人が孫と電車に乗りました。すいております。孫が「おじいちゃん、あっち」。指差した先がシルバーシートです。混んでいてもすいていても、老人はそこに座るものだと思っています。シルバーシートというのは端っこにあって、老人はそこにひっそり座って人の邪魔にならない。そういう席です。私はなるべくシルバーシートには座らないようにしております。

 

シモーヌ・ド・ボーボワールというフランスの作家でもあり思想家でもある学者が「老人が一個の廃品として扱われる社会は文化が頽廃している。国の品位が低い」と言っておりますが、私もいささか考えさせられます。老人が余っているという気持ちをいつの間にか国民がもたされたというところに、私たちの社会が検討しなければならない、非常に深く大きな課題が潜んでおります。

 

豊かさの代償

 

豊かになって得たものばかりではありません。失ったものがあるのです。
サンマ(三間)がないと言われます。魚のサンマは豊漁でしたが、こちらのサンマというのはのびのびした空間がなくなった、ゆとりのある時間を失った、そして潤いのある人間関係をもっていない。この空間、時間、仲間の三つの間抜けを三間がないと申します。小学生を見ていますと、友達同士、ポケットから手帳を出してスケジュール調整をします。忙しくなりました。ゆとりの

 

 

 

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