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私の住んでいる神奈川県には、昔、寺社林すなわち鎮守の森が1,850ありました。15年前に県が調査をしたところ、鎮守の森と呼べるのは42しか見当たらなかったというのです。それがはたしていまいくつあるかは存じません。それは鎮守の森を潰して工場を建て、住宅に変え、駐車場にしてきたからです。それによって工業が盛んになり経済が成長いたしました。その恩恵にいま私どもはあずかっております。しかし、鎮守の森、それは単なる物理的空間ではありません。そこは子供の遊び場であり、大人がお祭りをするところであり、緊急のときの避難場であると同時に、村社会の精神的シンボルでありました。このシンボルを壊して経済を発展させたのです。一体今日の私どもがこの精神的な拠りどころをどこに見いだすことができるか。たいへんむずかしい問題に直面しております。
今日なおヨーロッパでは、都市計画をするときには、真ん中に教会を据えて、スプロール状に町をつくるのです。しかし私どもの都市計画の中には、神社仏閣はいっさい位置づけられていないのです。その精神的な中枢を一体私どもはどこに置いたらいいのか。それが今日の私たちの問題でもあります。

 

日本で余っているといわれるもの

 

確かに経済は発展しました。そして実に豊かな社会を実現させたのです。
日本の社会に余っているものが三つあります。成人式を迎えた20歳の若者たちがテレビのキャスターから「何が欲しいですか」と聞かれました。異口同音に「お金」と答えました。何に使いますか。二つ。車を買いたい。海外旅行に行きたい。東京の銀行の調査によると、正月にお年玉を子供たちは平均2万7,000円も

 

 

 

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