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私たちの社会は有機体

 

北欧のデンマークは第2次世界大戦の初めごろ、ドイツと戦って敗れました。そしてドイツ軍の占領下に置かれたのです。ナチドイツはドイツ国内のみならず、占領した国々で600万人にも及ぶユダヤ人を虐殺したといわれております。デンマークを占領したドイツ軍も同じ命令を受けていたに違いありません。占領軍がデンマークの国民に指令を出しました。何月何日の朝何時からデンマークに在住するユダヤ人は胸に赤いマークをつけなければいけない。マークをつけずに外出する者は即刻逮捕する、と。
その命令が実施に移される日の朝早く、コペンハーゲンに住んでおられた王様が、一人で馬に乗って町を散歩いたしました。コペンハーゲンの市民たちが馬上の王様を見上げると、何とデンマーク人の王様の胸に真っ赤なユダヤ人の印がついておりました。それを見たコペンハーゲンの市民たちは、だれ言うともなしに自分から進んでユダヤ人のマークをつけました。一週間出ずして、デンマーク中の多くの人々が自主的にユダヤ人の印である赤い星印を胸に帯びたのであります。さすがのドイツ占領軍もこれにはどうすることもできません。ドイツが占領した国々でユダヤ人が守られたのはデンマークただ一国のみでした。これが連帯ということを物語っております。このデンマークの故事にならって、エイズの国際会議がシンボルマークをきめたのです。連帯のマークです。
連帯というのは仲良くしようという意味ではありません。専門家を前にして言うのは口はばったいのですが、人間の体は実に神秘的です。手のようによく働くと思われるところ、盲腸のように要らないのではないかと考えられるところ、見えるところ、見えないところ、さまざまの部分があります。しかし、ひとたび肉体

 

 

 

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