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?「日本人はすごい浪費家で、前日の売り上げが増えていたらその日は間違いなく目本人の団体が来たか、一日中雨が降っていたかのどちらかだ」とWorld of Beatrix Potterの店長は言う。
?「客には来て欲しいが、家を確実に保存するためにはヒルトップに入る観光客をどうしても減らさなければならない」とナショナル・トラストは主張している。
?ナショナル・トラストは、「広告を減らし、保護問題に対する日本人の知識を高めながら、彼らに他の観光地にも行くように勧めている」
?ナショナル・トラストは、建物の保護のために、日本人観光客数を減らすためのキャンペーンを日本で行うことを決定した。
この記事は我々に、「ヒルトップを観光客に対して開放しているナショナル・トラストですら歓迎しかねる行動をとっている日本人観光客」像を想像させ、同時にその実態と記事の真偽についての疑問を生じさせた。湖水地方は英国中部における大きな観光拠点の一つであり、日本人以外の観光客も数多く訪れている地域である。その中で、なぜ日本人だけがこのような取り上げ方をされたのであろうか。実際に日本人がこの地域でトラブルを起こしているのか、あるいは記事の背景に日本人に対する何らかの感情が存在するのか。もし仮に、記事が事実を伝える以上に日本人に対する何らかのアピールを含んだものであったとしても、この地方で、観光客と地元側との間に、記事に書かれたような入込制限に発展しうる状態が生じていることは十分考えられる。
今、湖水地方でナショナル・トラストと観光客の間に何が生じているのか。
以上の疑問が、本研究を行うきっかけとなった背景である。

 

2. 研究目的と分析内容

本研究の目的は、以上の背景をもとに、湖水地方(特にヒルトップ)について、この地方の観光が抱えている問題、中でも文化資源(歴史的建造物)の保存と観光的活用の間で生じる問題、日本人観光客をめぐる問題、さらに本記事の真偽と記事が書かれた背景について考察することにある。そのために、湖水地方におけるヒアリング調査を実施し(表−1)、併せて文献資料を収集した(参考文献リスト参照)。

表−1:ヒアリング調査対象者リスト(1996年2月4日〜9日)

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分析内容は以下の6点である。
?ヒルトップの観光地としての特性
?ヒルトップへの観光入込の実態について。特に過剰利用の実態

 

 

 

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