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シルクロードセミナー

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「シルクロードの魅力」

樋口 隆康
京都大学名誉教授
シルクロード学研究センター所長
●1919年、福岡県田川郡添田町生まれ。1943年、京都大学文学部史学科考古学専攻卒業。のち大学院において梅原末治教授の門下生として、中国の古銅器・鏡鑑の研究に従事。1957年に京都大学文学部助教授、1975年同教授となる。同じ1957年に原田淑人東大教授を団長とする、戦後はじめての日本考古学訪中視察団に参加し、敦煌・四川省を訪問し、シルクロードの研究を始める。1958年にはインド仏跡の調査団に参加し、1959年にはイタリアに留学する。その後、京都大学中央アジア学術調査隊に参加する。1970年から8年間は、京都大学中央アジア学術調査隊の隊長として、アフガニスタン・バーミヤーン石窟を中心に研究を進め、その報告書は世界的名著として高い評価を受けている。1990年からはシリアのパルミラ調査にとりくみ、シルクロード学研究センターの研究事業として位置づけ、現地にいく度も行く。シルクロード全線の調査を自ら行いローマに至っている。主な著書に「中国の銅器」「古鏡」「三角縁神獣鏡綜鑑」「ガンダーラヘの道」「シルクロード考古学1〜5」「シルクロードを掘る」「バーミヤーンの石窟」「シルクロード学の提唱」(対談集)など多数。現在、シルクロード学研究センター所長(1993年より)、橿原考古学研究所所長、泉屋博古館館長、京都大学名誉教授など。

 

ただいまご紹介に預かりました樋口でございます。
本日ここにお越しの方々は、大体シルクロードのベテランの方が多いのではないかと思います。いろいろシルクロードの各地にもいらっしゃった経験豊富な方だと思いますので、そういう方に今さら「シルクロードの魅力」などという話をするのもどうかと思いますし、魅力というようなものはむしろ皆様方がご自分でいろいろと体験されればよいわけですが、ただ一言申しておきたいのは、シルクロードというのは今日、日本あるいは世界でも非常に関心を持たれておりまして、これは私などから考えますとシルクロードというものは、人類の歴史の中でいわゆる国際交流というものが最も成功した一つの例ではないかと思うのです。
日本という国は、古来から大体日本人種、すべて日本語をしゃべるという単一民族で形成されております。そういう国ではなかなか外国との交流というものはしんどいと言いますか、そんなに自由に行われておりません。明治以前には鎖国時代というような長い間国を閉鎖した時期もございました。外国にはいろいろな民族が一つの国を形成するいわゆる多民族国家が多く、異民族間の交流というものは日常茶飯事に行われている、いわばベテランです。
今日本では国際交流を進めなければいけないという皆の非常に強い意欲がございまして、そういう時に、何を参考にしたらいいかという時に、一番お手本になるのが、実はシルクロードの歴史ではないかと思うわけであります。
と申しますのは、シルクロードというのは、各地の民族の間の交流がはじまって、これは最初はいわゆる経済的な貿易だったのですけれども、その間にやはりお互いのいろいろな文化の交流によって、各民族がそれぞれに啓発されて、独自のものを作り出していったという実際の歴史事実があるわけでございます。ですから我々日本人にとっては、今後国際交流を促進していかなければならないという時の一番よいお手本だと、私などは感じているわけです。
それで今日お話ししようと思いますのは、ベテランの皆様方があまり行っていらっしゃらないところはどこだろうかと考えてみました。そういたしますと、アフガニスタンという国がございます。今回恐らくアフガンの方はいらっしゃっていないのではないかと思いますし、またいわゆる観光の国としてアフガニスタンというものはリストに上がってこない。そういうところをどうしてやるのだということがあるかもわかりませんが、実はアフガニスタンという国は、私は「シルクロードのへそ」というふうに考えているところでございます。文明の十字路という言葉がございますけれども、アフガニス

 

 

 

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