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はじめに

シルクロード・トラベル・フォーラムは、シルクロードに関係する国々19カ国から43名の方に参加いただいておりますように、多くの方々の協力で可能になりました。シルクロードそのものが交易の道でもあり、文化伝播の道であるという多くの側面を持っております。シルクロードが一国に留まらない国境を越えた広域的なプロジェクトであることで、世界観光機関(WTO)が取り上げましたのも、観光資源としての広域プロジェクトの開発という観点からであります。シルクロードは観光資源であると同時に、人類の文化的な遺産であります。このプロジェクトは、人類の文化遺産の保護という観点から、はじめてユネスコと共同で作業をしており、2つの国際機関の協力として大変にうまくいっているケースであると考えます。
また、開催国の日本においても、多くの方々の協力をいただいております。日本国政府、運輸省のご協力とご支援をいただきまして可能となりました。ご当地の奈良県、奈良市をはじめとする自治体の方々、観光業界の代表の方々からもご協力とご支援をいただきました。私どもは、官民の協力の証としてこのフォーラムを開催することが可能になったと考えております。
私どものアジア太平洋観光交流センター(APTEC)は、WTOのアジア地域事務所ができました時に、これをサポートする目的でつくられました公益的な非営利団体でございます。アジア太平洋事務所が、今回のフォーラムに協力していることも官民協力の証の一つであると考えております。
シルクロードに関係する国々がこれほどの規模で一堂に会したのは日本では初めてのことで、まことに画期的なことと考えております。シルクロードという多くの国々にまたがる広域的なプロジェクトを語る場として大変ふさわしい場であったと考えております。会場は日本の代表的古典芸能である能を演ずる舞台でした。シルクロードは商業交易の道であるとともに、また同時に文化を伝播する道でもありました。シルクロードのテーマがこの能舞台で語られたということは、これはまた一つ、文化と文化の出会いと考えられるわけで、これほどふさわしい場はないのではないかと思います。
シルクロード・トラベル・フォーラムがこの奈良で開かれたことも大変意義深いことであると考えております。シルクロードの文物は遙かな海を越えて奈良にまで伝来してきました。当時8世紀の聖武天皇の大変めずるところとなったわけであります。以来、正倉院の御物として1000年の時を越えて今もなお大切に保存されているわけで、シルクロードの文物が当時のままの形で保存されているというのは、世界中を探しましてもこの奈良だけてあります。この事実が人々のこころに遥かなるシルクロードに対する思いを育み、またシルクロード学というものの発展を促したのであります。シルクロードを論ずる所としてこれほどふさわしいことはないと考えております。
奈良は非常にシルクロードの研究においてユニークな地位にあり、正倉院の歴史を踏まえて長い間のシルクロードの研究の蓄積がございます。今回はシルクロードの歴史と研究ということに重点を置きながら、シルクロード学に関します最高峰の権威の先生方にご講演をお願いすることができました。

 

財団法人 アジア太平洋観光交流センター
理事長 山下哲郎

 

 

 

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