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第4章 河西回廊における観光開発・観光振興に対する問題点および提言

 

河西回廊地域の空港、ホテル、道路等の観光関連の施設を中心とした受入れ体制は、数年前を知る人にとって隔世の感がある程に整備されてきている。今後、シルクロード河の東の出発点として西安とともに太い幹となって新彊ウイグル自治区および中央アジアヘと伸びる観光地としてのシルクロード全体の活性化の先導役になることを期待して、ここに河西回廊における問題点および提言をまとめた。

 

1. 冬期の観光客の誘致対策の必要性

敦煌には冬期の間の観光客向けの航空機の発着がほとんどない。滑走路の凍結等の物理的理由ではなく、観光客の来訪が減少し、需要が落ち込むことによる採算性の問題であるらしい。確かに敦煌においては、1月の最低気温は氷点下15℃程度になるというが、室内で見学が出来る博物館や展示場の充実による集客、冬期割引料金の設定、冬期のパッケージツアーの設定(莫高窟等を空いている時期を利用して充分に堪能する旅)及び広報活動等を検討していく必要がある。
訪問した各地で、日本からの投資を期待する声があったが、採算性の観点から先ずこの通年営業が一つの課題である。
観光旅行事業の安定した発展のためにも望まれる。

 

2. 博物館の充実

各地に博物館があり、観光客にとって有り難いことであるが、もう一つ観光客にとって暖かみのある配慮が必要ではないのか。例えば、敦煌博物館や甘粛省博物館には敦煌の莫高窟に勝るとも劣らない貴重な歴史的遺産が陳列されているが、パンフレットや説明書が不十分であったり、説明書が暗くて読めない所もある。また、これだけ日本人が多く訪ねるシルクロードでは日本語のフローシャー等があるとよく理解できて親しみを持つことになり、興味をますます湧かせることが出来る。甘粛省の旅游局の話では日本語のパンフレットの作成には力を入れているのだが、まだ博物館の説明書までは手が回らないとのことであった。日本のODAの活用、シルクロード協力事業の推進の中での協力による問題の解決が望まれる。
また、オリエンテーション・センター的な施設の整備があると、より理解がし易い。

 

3. 各観光地間の見学施設または休憩施設の整備

国土も広く、歴史もある中国は一級の観光地がたくさんあり、かつ、散在している。河西回廊では、航空便がスケジュール上で都合が悪ければ、ほとんど1日中バスで移動することとなる。車窓からの景色を眺めるのも、それなりに楽しみでもあるが、ちょっとした観光資源がある所では休憩施設を整備して、休憩とともに食事や観光資源の見学等の工夫があると単調さをカバーすることができる。
敦煌と嘉峪関の間をバスで移動する途中に、橘湾城遺跡がある。両地の間はおよそ370km程離れていて、その中間地点に近いところにある。バスに乗り疲れている体を癒すにも役立つとともに、珍しい観光資源を見学することができる。この遺跡には伝えられる物語があり、康煕帝の意に沿わなかった城主とその子が処罰され、その父子の頭蓋骨で作ったお椀や皮で作った太鼓がある。また、禅僧のミイラ、玄製がインドから持ち帰った象牙の彫り物、楡林

 

 

 

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