地域に根ざしたまちづくり
成井光一郎(茨城県金砂郷町長)
金砂郷町は、県庁所在地の水戸市から北へ約25km。茨城県の北部に位置する人口11,000人、総面積61.67km2の過疎の町である。
東西6.1km、南北19.1kmと細長いのが特徴で、南部は水田地帯、北部は山林と畑作経営が主であり、大部分の農家が第二種兼業農家である。
町の課題
今、盛んにまちおこし、地域おこし等が叫ばれているが、現実の施策の中では、非常に難しい面が生じている。
かつて市町村行政の仕事といえば、学校、橋、道路、上下水道等を整備し、各種の団体へ補助金を交付すること等が主であった。しかし、近年、少子化、高齢化、核家族化、米・麦穀類の価格の低迷、加えて減反問題等が大きな問題となり、これに地方の末端行政がどう対応するかが、非常に重要な行政上の課題となっている。
まちおこしの考え方
まちおこし、地域おこしは、その地域固有の資源、宝石に例えれば原石を磨きだし、世に送りだすことではないだろうか。
かつて、中世ヨーロッパにおいてルネサンス文化が大きく花開いたが、これはいわゆるパトロンが潤沢な資金力を背景に、芸術家の自由な活動を支援したからである。
「金を出しても、口は出さない」は、地域の活力を育てる一つの方法であるが、行政の中でやっていくのは非常に難しいことである。
実際には、地域固有の資源を核にし、有能な指導者の自主性を尊重しながら活性化を図ることが基本ではないだろうか。
顔のある地域づくり
本町では、町北部にいま二つの「郷」づくりを行っている。
一つは「西金砂湯けむりの郷」であり、もう一つは「西金砂そばの郷」である。
本町北部には、清例な地下水と極めて高品質のそばという特産物がある。これら二つの「郷」は、この優れた特産物を有効に活用して、地域の活性化と地場産業の振興を図ろうとするものである。
これらふたつの「郷」の運営管理は、優れた指導者を持つ地元のグループに任せているが、初年度でもあり、経済的にも不安も残るので、いまのところ半官半民の形をとっている。
オープンしてからまだ半年も経過しないので一概にいえないが、利用客は平日で300人前後、土日祭日は500〜600人あり、まあまあの滑り出しである。この北部地区は、町の中でも高齢化率が30%と非常に高く、山間地のため畑作経営に依存し、他からの入込み客などは考えられなかった地域である。
今、この地区では、コミュニティ活動と地域の更なる活性化を推進するため、自治コミュニティ助成事業により整備した「太鼓」を披露するために、鳴物保存会連絡協議会を結成し、「響太鼓」の練習に励んでいる。
この地区には、昔から西金砂神社に奉納する「田楽舞」や太鼓の「通り囃子」が継承されているが、「響太鼓」は、鳴物保存会連絡協議会の発足を記念して会員自らが創作したものであり、この会ではこれを地域おこしの目玉にしようと頑張っている。
今年6月には「そば」グループ4名と「太鼓」のグループ21名、計25名が「まつりインハワイ」に参加し、大好評を得てきたとの報告を受けている。これからの時代は、その地域、地区にあった個性的なまちづくりが大事であり、「金太郎飴」的になりがちな施策は避けようと、日夜自問自答している毎日である。