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阪神大震災での“協働”を教訓に

〜分権化時代のコミュニティ〜
川島正英((株)地域活性化研究所代表)
地方分権化の時代がやってきたならば、「コミュニティはどんな変化を見せるのだろうか」そのイメージを描くのは、なかなかに難しい。地方分権を住民に理解してもらうのも、同様に難しいといわれてきた、「分権」は、やはり、それほどに得体の知れないものといえよう。
それを意識してなのだろう地方分権推進委員会が3月29日に、橋本首相へ提出した「中間報告」は、国民、住民の立場からの分権を相当に意識したものとなっている、そこに、注目しておきたい。
私への注文は、地方分権に対応したコミュニティのあり方である、阪神大震災での「協働」を例に取ったりしながら考えてみたい。
I.分権委「中間報告」を読む
地方分権推進委員会の中間報告に対する評価は、一般に高いものだった。もちろん批判もいくつか、その1つは当然のことだが、中央省庁から。既得権を侵害される側として、中央地方の関係を逆転させようという中間報告の方向には賛成できなかったのだろう。
ただ、この中央省庁からの批判的意見はだんだんに表面化してきたつけ加えて、その意向を反映した形で、国会議員からの外圧が見られるようになった、“族議員”として、省庁の考え方を汲んだものである。政党が衆参両院の分権推進決議当時に揚げていた分権推進の政策と反して、官の論理を擁護する方向に動き始めたわけだ。
こうした反発がもっともこわい。それとともに一部の市町村や、一般の世論の中から聞かれる声に「住民とはあまりに関係のない改革ではないか」という疑問がある。“官官分権”といった言葉が横行し始めている中間報告の中枢をなす「機関委任事務の移議」はじめ、分権推進委の具体策が中央省庁から地方自治体への権限の移し換えに過ぎない、との見方である。
私は、その意見に反論する必要はない、と考えている。地方分権推進委員会は、ある意味で官官分権を詮議し、そのあり方を内閣総理大臣に勧告するのが、その役割であると思っている。中央一地方の機能分担の制度をいかにつくり変えるか、つまり国から都道府県へ、さらに市町村へと機関の間での権限の移し替えについて、新しいあり方を探り、改革内容を正確に定義づけていくのが最大の任務だからである。
もちろん、私の意向はどうあってもいい、分権委の論議では、絶えず住民向けという意識が底に流れていた。だから「中問報告」でも、総論の中に一節を設け「生活者・納税者の視点に立った地方分権の推進」について説明を加えていたばかりでなく、地域、また住民への配慮とか呼びかけが目につく。

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