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人と自然の共生国際交流と音楽のまち

田口久男(岐阜県白川町長)

 

日本列島のど真ん中に位置する白川町は、飛騨の山並に連なる山々に囲まれ、飛騨川を始め、東濃五色川とも呼称される「白川、赤川、黒川」など5つの河川流域に開けた、水と森の自然豊かな町である。人口1万2千人、面積238km2を有する典型的な農山村であって、全体の87%までが山で占められ、優良建築材として評価の高い「東濃桧」の産地として知られている。また、400年の歴史をもつ「白川茶」は、高級茶として多くの人に親しまれてきた。
ふる里創生の始まった頃、活力ある町をめざして建設を進めてきた5つの里づくりは、町村合併以前の旧町村を単位として、「ふれあいの里」、「伝習の里」、「せせらぎの里」、「芸能の里」、「やすらぎの里」を、それぞれ個性と特色ある施設として整備してきた。これらの里づくりと平行して進めてきたのが、「国際交流と音楽の町づくり」であった。
この事業のきっかけは、昭和51年にパイプオルガンの建造家として知られる「辻宏さん」が、神奈川県から本町へ移り住んだことによって始まる。
辻さんの周囲には、国内国外を問わず音楽家が次々と訪れ、ミニコンサートが開かれるようになり、町民の間にも音楽に関心を持つ者が次第に多くなってきた。
やがて辻さんは、イタリア中部のピストイア市の教会にある、ルネッサンス時代のパイプオルガンの修復を行うこととなり、これがきっかけとなって、白川町とピストイア市の交流が始まる。
まず交流は、両自治体の首長の相互訪問から始まり、音楽家の来町、青少年の相互訪問による体験学習、一般住民の相互訪問交流、産業祭や文化祭への相互参加、食文化や産業交流など、あらゆる分野での国際的交流が盛んに続き、平成6年には両市町の間で姉妹提携の調印も行っている。
中でも最も効果を上げているのは、オルガン音楽アカデミーの開催である。ピストイア市側からの「日本の若い音楽家を育て国際的な音楽活動の一助にしよう。」との提案があり、本町ではこれを受けて昭和60年から、「イタリアオルガン音楽アカデミー」を毎年開催し連続12回に及んでいる。講師陣にはピストイア市の国立音楽院教授を始め、一流音楽家4名によって指導がなされており、研修生は延べ419名に及んでいる。

 

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研修生のうち優秀な成績を得たものは、イタリアの本場で研修を受ける機会が与えられ、すでに、このアカデミー修了生の中でヨーロッパに移り住んで音楽活動を続けている者も多く、レベルの高い音楽家が数多く育っている。辻さんのオルガン修復は更にスペイン・サラマンカ市の

 

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