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WHO神戸センターへの支援と期待

 

兵庫県

 

阪神・淡路大震災から1年余りを経た平成8年3月17日、WHO(World Health Organization世界保健機関)本部直轄の研究機関として「世界保健機関健康開発総合研究センター」(WHO Centre for Health Development 以下「WHO神戸センター」という。)が神戸に開設された。
このセンターは、兵庫県が平成2年以来、神戸市及び地元経済界等と共に誘致を進めてきたものであり、また阪神・淡路大震災からの復興を先導するシンボルプロジェクトの一つとして、その開設を支援してきたものである。センターの設置がWHOで決定されたのは、平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災直後の1月23日、WHO本部(スイス・ジュネーブ)で開かれたWHO執行理事会においてであった。この決定の報は、ガレキに埋もれ、救援、復旧に必死で取り組んでいた被災地に大きな希望を与え、被災地を勇気づけるものであった。
WHO神戸センターは設立後まだ日が浅く、仮事務所での活動であるが、本稿では、センター設置の目的、誘致の考え方、センターの活動内容等を紹介し、あわせて地元自治体としての期待等についても触れてみたい。

 

1 WHOの新たな研究分野への展開
WHOは1948年に設立された保健衛生分野を担当する国連専門機関の一つであり、加盟国数190を数える最大規模の国連機関である。WHOではこれまで、主として医学や公衆衛生学の観点から疾病対策を中心とした活動を行って来ており、天然痘の撲滅やポリオ根絶計画の推進などに大きな成果を上げ、「Health for All」(全ての人に健康を)のスローガンの下、世界の全ての人々の健康水準を高めるための活動を行っている。
しかし、世界にはまだ多くの疾病が蔓延する一方、高齢化、環境問題、先進国と開発途上国の健康格差など新たな課題が人類の健康問題に陰を落としている。このような地球規模の問題を解決し、人類の健康増進を進めるためには、従来の個別の疾病対策を中心としたアプローチに留まらず、経済政策と健康との相互関係の解明など社会的、経済的、文化的要因などが健康に及ぼす影響について、総合的、学際的な研究の上に立った対策の必要性が指摘されていた。
WHO神戸センターはこのような背景の下に構想されたものであり、健康開発をめざす初めてのリサーチセンターとして、21世紀へ向けた新たな保健パラダイムを実現するために設置されたものである。

 

 

 

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