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国際化と日本の地方税
東京大学経済学部教授 持田信樹

 

1.はじめに日本経済の国際化が近年、急速に進展し、個人・企業といった生産要素の国境を超えた地球規模での移動が進んでいる。図1に見られるように、個人の移動についてみると登録外国人数は最近9年間で1.6倍に増大し、現在約135万人にのぼる(1994年末、出入国管理統計)。他方、在外邦人も約69万人へと1.54倍に(海外在留邦人数調査統計)、出国日本人数にいたっては年間1,357万人へと2.74倍に伸びている(出入国管理統計)。企業の移動を見ても、80年代に約1,200社前後であった外国法人数は90年代以降急増し、1,680社に達している(国税庁統計報告書)。
図1国際化の話指標

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このような生産要素の国家間移動に伴って、地方税の課税・徴税上、封鎖経済では生じなかった新たな問題が起こりつつある。(1)納税義務の判定と未納税者の出国、(2)課税対象所存の捕捉、(3)地方税におけるPE(恒久的施設=Permanent Establishment)認定、(4)移転価格税制に基づく地方税還付間題、(5)地方税における外国税額控除等がそれである。
これらの問題には日本の地方税制の特質が少なからず関係しているというこ

 

 

 

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