日本財団 図書館


 

第四節 国際化に対応した地方税制のあり方

1 総論
国際化に対応した地方税制のあり方については、理論的にはさまざまな角度からの検討が考えられるが、それについては、第二部に譲りたい。第二部では例えば、ボーダレス化社会の進展に伴う社会経済システムの変革、それによる国と地方の役割の議論も含めた国税と地方税のあり方といった視点からの考察、あるいは、国際化の問題は、国家間での課税権と課税権のぶつかり合いの問題であるが、地方税についてはそれぞれの地方団体ごとに課税権があるのであり、課税権を純粋に捉えるならば、国と地方、地方と地方、地方と外国の国家あるいは外国の地方団体との間の課税権の衝突が考えられるといった課税管轄権の視点からの考察などが行われている。
本節では現行地方税制度を前提とした実務的な検計を行うこととする。まず、消費課税、、資産課税については、外交官等に対する特例などがあるものの、「第二節 1 地方税に基づく調整」の冒頭でも述べたが、原則として居住者・非居住者あるいは内国法人・外国法人の間で取扱いに差異はなく、課税制度上特に考慮すべき点はない。
ただし、徴収についていえば、例えば自動車税や固定資産税等で、外国人が納税義務を履行する前に出国してしまって徴収が困難になる等の問題は生じうる。
以下では、最も問題となる所得課税の賦課・徴収を中心に整理する。
(1)個人所得課税
住民税の賦課徴収にあたっては、永住者である外国人は別として、課税対象となる外国人の把握が、難しいという事情がある。
特に、外国人の中には住所、居所を転々とする者も多く、いわゆる不法就労者の場合など、賦課期日(1月1日)現在における「住所」の認定が困難なケースも多い。
これらの外国人の所得の捕捉の問題もある。
納税義務者である外国人が給与所得者であって、特別徴収義務者である給与支払者から給与支払報告書が提出されているような場合や所得税について確定申告をしているような場合には、特段の支障はない。
しかし、例えば外国人登録をしておらず、アルバイトなどで生活し、居所も転々としているようなケースには事実上地方団体が前年の所得を正確に把握して賦課することは極めて困難である。
実務上、さらに難しいのは徴収である。
例えば給与所得者の場合、現年所得課税である所得税では源泉徴収が行われるためあまり問題とはならないが、前年所得課税のとる個人住民税の場合には、賦課決定の後、現に徴収されるまでの間に帰国したり、住所を移転してしまうといったケースも見受けられる。
こういった場合には、日本人の場合に比べ滞納になる可能性が高いと考えられる。
このような場合、法的には納税管理人の制度の活用が考えられるが、日本に身内等がいない場合も多いであろうし、実態としてはあまり活用されていないのが現実であ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION