日本財団 図書館


 

第二節 国際化に関する現行地方税体系

第一節でみてきたとおり、経済の国際化の進展に伴い、外国人や外国法人が我が国で行う事業活動の増大、我が国企業や個人の海外での事業活動、国際的交流の活発化に伴い、国境を越えたヒト、モノ、カネの流れが増大している。これらに対し、各国がそれぞれの国家主権に基づく固有の課税権を有していることから、課税の方法等により、同一の納税者や所得に対して複数の国が課税を行う状況が生じる。
そこで、このような二重課税を回避し、課税権の調整をどう図っていくかという国際租税制度が必要となる。
所得課税及び資産課税の場合、課税方法として「居住地国課税」と「源泉地国課税」がある。
居住地国課税:各国がその居住者(個人居住者及び内国法人)に着目して、その全世界所得、保有資産に対して行う課税
源泉地国課税:自国内源泉所得、自国内所在資産に対して行う課税
国際的に複数の課税権が存在し、居住地国課税と源泉地国課税が競合する場合には、同一の所得、同一の資産につき国際的二重課税が発生することとなる。国際的二重課税は企業の税引後利益を低下させ、国際間の資本移動や技術移転の障害となり、結果として国際経済の健全な発展を阻害する。
そこで、多くの国では、国際的二重課税を排除し、税制の経済活動に対する中立性を確保するため、国内法上の措置として、外国税額控除方式または国外所得免除方式を採用している。
外国税額控除方式:支店または現地法人の所得はその所在地(源泉地)国で課税することを容認するとともに、支店利益及び子会社からの受取配当に対して本国でも課税し、その際、外国で課税された税額の控除を認める方式。(我が国もこの方式を採用)
国外所得免除方式:支店または現地法人の所得はその所在地(源泉地)国でのみ課税し、本国では課税しない方式。
しかし、各国の国内法の規定ぶりは多種多様であり、国際的に整合性がとれているとは限らない。また、国内法が十分整備されていない国もあり、国内法上の措置だけでは二重課税の排除は十分にはなされない。
そこで、租税条約を締結して二国間での課税関係の調整を図ることになる。租税条約についてはモデル条約があり、現在のモデル条約としてはOECDモデル条約と国連経済社会理事会(ECOSOC)による国連モデル条約とがある。
OECDモデル条約:先進国間の租税条約のモデル。
国連モデル条約:先進国と開発途上国との間の租税条約のモデルを提供すべく起草されたもので、開発途上国サイドの立場を考慮したもの。
また、各国租税制度の隙間が不可避的に生ずることからくる、租税回避、捕脱という問題がある。これに対する各国国内法上ないし租税条約上の対抗措置・制度として、タックス・ヘイブン税制、移転価格税制、過少資本税制などがある。
タックス・ヘイブン税制:税負担が我が国に比して著しく低い国・地域に所在する我が国法人の子会社等(居住者、内国法人により直接、間接

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION