

平成8年度 No.1 1996年5月1日 (財)資産評価システム研究センター(通巻92号)
住民の力
(財)資産評価システム研究センター理事長 前川尚美

地方分権推進委員会の審議が進み、権限移譲、機関委任事務制度の廃止等、地方分権の具体的な構想が明らかになるにつれて、関係各省や一部の政治家などからの反駁が厳しさを増しているようである。
しかし、地方分権の在り方を考究する際に忘れてならないことは、「今日の地方分権の動きの底流には、その推進により中央集権の弊を除き、活力に満ちた豊かな社会の実現を確実なものにしたいとの各界各層の強い願いがある。」ということである。地方六団体や有識者等による地方分権の積極的な提言は、このような願いの実現を図るための活動であって、地方側の独善的な主張でもなければ、国・地方間の権限争いの如く評される類のものでもないことを再度認識する必要がある。
ただ、今日までの経緯の中でやや気掛かりなのは、地方分権の実質的な当事者であるはずの住民の生の声が、政治の場には未だあまり聞こえていないことである。
国民は、今、多くの分町で、国を頂点とするさまざまな制度の枠組の中に組み込まれている。しかし、地方分権の進展に伴い、その枠組は変動し、住民の行政上の地位や役割も変わると思われるが、このことが具体の姿でどの程度住民に浸透しているのであろうか。
いうまでもなく、地方分権の基本は、明治維新以来の中央集権的な政治行政システムを変革し、地域社会やその住民の間に存する中央集権的な意識や社会構造を改め、地方の政治行政を、地域住民自身の自主的・自立的諸活動に委ねることにある。そのことはまた、「住民自らが地域社会における行政施策とこれを賄うべき負担とを自主的に選択し、決定し、住民自らがその結果について責任を負い得る社会」を実現することを意味する。
したがって、地方分権の在り方についてキャスティング・ボートを握るべきは、地方分権時代の主役となる住民であり、住民を代表する職員であることは自明である。
さればこそ、地方分権の流れを実あるものとするためには、住民各自が地方分権について正しく理解し、公私を問わずあらゆる機会を捉えて、自分の言葉で、その意欲を政治の場に伝えることが重要である。そこでは、住民の生の声が予期以上の力を持つ。この面で市町村に期待される役割は、大きい。
地方分権の推進に伴う地方税財源の充実強化も、住民の理解と協力なくしては困難であるだけに、ひとしおその思いを深くする。
住民の力 前川尚美(1)
平成8年度地方税法の一部改正の概要(2) 金碍鯊析此ハ2)
平成8年度収入見込み 藤澤修(4)
平成8年度事業のあらまし (財)資産評価システム研究センター(6)
四日市市における家屋の比準評価について 本多知行(8)
市町村交付金における台帳価格と固定資産税における評価額との関係 及川信(10)
「固定資産現況調査更新事業」について (財)資産評価システム研究センター(12)
通達 (15)
事務連絡 (16)
業務だより (20)
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