?@縮背 泳ぎの普及・振興
(財)日本水泳連盟医・科学委員長
東京大学大学院教育学研究科教授 宮下充正
水泳を習いたいと希望する人が最も難しいと思うのが、水泳中に呼吸を繰り返すことである。
1964年に開催された東京オリンピック以降、日本の水泳指導の中心はスイミングクラブヘと移行し始めた。そのとき、最初にどの泳法から指導すべきかが検討課題となった。
初心者水泳指導では、絶えず口や鼻が水面にある背泳ぎから入るのがよいのではないか、という人もいた。一方、逆に、水面で仰向けになることに不安を感じる人も多い、という人もいた。いろいろと検討した結果、時間さえかければ、どうせ呼吸法は身につくものであるから、呼吸がしやすいから背泳ぎを最初に指導する必然性はない。最も自然な動作であるクロール泳法から指導しようということになった。ただし、現在、ベビースイミングが対象とする乳・幼児水泳指導では、最初仰向きで呼吸する方法を教えている場合が多い。
40年近い昔になるが、私が水泳にかかわる研究を始めるに当って、当時競泳の先進国であったアメリカの研究報告や資料を参考にした。その中で、からだの柔軟性を重視する文章があった。そこでは、特に足首の柔軟性が高いほうが、水泳選手としては有利であると書いてあった。
足首の柔軟性を測る方法はいたって簡単で、次のようなやり方であった。台の上に選手に長座位(片膝を立て、片脚は伸ばす)で座ってもらう。そして、片足の横に画用紙を立て固定する。まず、つま先を手前にできるだけ近づけた(背屈した)ときの足の裏を、鉛筆でなぞって画用紙に線を書く。次につま先をできるだけ前方へ伸ばした(底屈した)ときの足の裏を、鉛筆でなぞり同じ画用紙上に線を書く(写真1)。そして、なぞった2本の線の角度を測り、大きいほうが柔軟性が高いとした(図1)。
写真1 足首の柔軟性を簡単に測る
図1 足関節柔軟性の評価
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