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日本人にとって英語とは何か

 

釧路海上保安部巡視船そうや
粟井次雄
 
外国語、中でも英語の能力を身につけたいと考えている人は世の中に無数にいる。それらの人々の中には単に上達願望に留まり何もしない人、試行錯誤を繰り返している人、自分なりの方法を見つけてそれなりの成果を挙げている人等、色々である。上達したい理由についても、具体的な職務上の必要性から海外旅行の便宜や楽しみのため、又は何となく世の中のブームに煽られ、英語くらいはできないと世間に取り残されてしまうような漠然とした不安感(パソコンに対する中高年の不安に似ているかもしれない)等の諸々のものがあるようである。
海上保安庁においても国際化の進展の名のもと英語能力向上の必要性が叫ばれて久しい。私が保大を卒業した昭和59年の校長訓示の冒頭は「近年の海上保安業務は高度化、国際化の一途を辿り…」というようなものであったと記憶するが、この台詞は、それ以前からも毎年繰り返されてきたものであり、現在も不動文字の如くに刷り込まれているもののようである。一体どこまで高度化・国際化すれば定常化するものなのかは知らないが、「国際化」とは教育、業務実施、予算等のあらゆる場面において使用される常套句であり、「国際化」への当庁の認識が意味するところはさておき、人口膾炙にこれ以上のものはない。当庁以外の官庁、あるいは民間会社においてもこれは概ね同じ状況であろう。日本社会では「国際化」即ち「英語力の向上」として理解されているのである。
さて、教育機関および研修当局の努力を軽視するものではないが、掛け声と投資の割に成果には見るものがないように思われる。外国語能力の向上のために投下する努力と経費に見合う(あるいは期待する)成果が上がらず職員や当局者の中に不満や諦めが支配している状況は放置しておいてよいものではないように思う。当庁の部外委託の英語研修制度には具体的な努力目標の設定と成果の検証がない。研修は箔をつけるためのものであり、形式的にコースを修了すれば成果は初めから期待しないと割り
 

 

 

 

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