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新旧国際課長挨拶

 

前課長挨拶

 

前国際課長 大庭靖雄

 

先の6月の人事異動で、国際課長の職を離れることになりました。着任した昨年の6月には、国連海洋法条約の批准、国内法化のための作業が着々と進められていました。外務省での条約読会の日程が明らかになってきて、また、国内法化のために庁内のプロジェクトチームが遅くまで作業をしていました。これに加えて、条約の実施のための領海の確定や、海図の作成が加わって年末から翌年にかけて庁内の緊張の度は上がっていきました。また、昨年秋には、オーストラリアの海上安全庁の長官を迎えて首脳レベルの協議が行われました。アジア太平洋地域において、新たに海上保安機関の首脳会議を組織しようという問題を検討したのです。この件は、今年の4月、オーストラリアのブリスベンで第1回目の会議が開催され、次回の会議が日本で開催されることが決議されて、順調にその第一歩を踏み出しました。
このように多くの国が関わる国際ルールの形成や、国際会議の発足のほか、二国間でも解決すべき多くの課題がありました。特に、ロシアとの間では、国境警備庁との協力のあり方を模索する事に加え、北方四島周辺海域での日本漁船の安全操業問題がありました。このため1年間に5回の協議、交渉を行いました。このほか、海洋法条約の批准に伴い、韓国や中国との間の大陸棚、排他的経済水域の境界の画定が厳しい問題として浮かび上がってきました。竹島や尖閣列島を巡る警備問題が当面の大きな課題となってきたのです。これらの仕事に関わりながら強く感じたのは、今や海洋は自由の時代から囲い込みの時代に入ったということです。水産資源や鉱物資源の有限性が認識され、これらの資源を確保するために沿岸国が広大な沿岸海域をコントロールしようとする考え方が受け入れられ、ルール化されてきているのです。沿岸国のコントロールが及ばず自由な空間とされていた海洋が、陸地の延長部分として、国の権益の直接関わる空間になってきたわけです。国連海洋法条約の実施をふまえて、この

 

 

 

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