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あとがき

平成8年11月3日から2週間インド・タイの2カ国を訪問し、海上保安業務の調査を行った。日程の都合や相手国の事情などから十分な調査時間を取る事が出来なかったが、関係の方々の協力を頂き各機関の情報収集を行うことが出来た。
両国とも日本とは伝統的に友好的な関係にあり、近年さらに緊密さをましている。インドは第二次世界大戦後に英国から独立した国であり、1950年代には米ソ冷戦の中、ネール首相が非同盟外交を展開しアジア・アフリカ諸国をリードしてきたが1960年代以降政情の不安定な時期が続いた。経済的にはソ連型社会主義経済を取り入れたが、近年市場重視の政策に転換している。ニューデリーは大きな街路樹の目立つ静かな雰囲気の街であった。次に訪れたムンバイは旧名ボンベイのことで、人口1,200万のインド最大の都市である。古いビルと人と車と騒音の街という感じである。しかし海岸に出ると、若いカップルの寛いでいる砂浜と椰子の木の美しい風景が広がっていた。
タイは東南アジアにあって、古くから独立を維持している国である。これはタイの柔軟でバランス感覚に富んだ外交によるところが大きい。経済的には、1980年代後半から高度経済成長と国民所得の増大を実現し、引き続き高い水準の成長を続けている。首都バンコクは560万の都市でビルが林立し、自動車の洪水であった。デパートやスーパーマーケットには商品が溢れていた。
海上保安業務につては、インドは警備救難業務は、主として国軍の一翼であるコーストガードが担当し、海軍などが協力している。また水路業務は海軍水路局、航路標識業務は運輸省灯台灯船局が担当している。ムンバイで最新のヘリ搭載大型巡視船SAMARを見学する機会を持った。この船の他に9隻のヘリ搭載型巡視船を所有し、しばしばEEZを侵犯する近隣の国の漁船をだ捕しているとのことであり、かなり充実した勢力であることが感じられた。また、ムンバイのやや北にある、UTTAN灯台を見学した。大型の灯台で5人程の職員が滞在管理していた。水路局長と面談した際、水路局が海軍所属のためJICAの技術研修が受けられないのが残念であるとの話があった。
タイでは内務省海上警察隊、海軍と運輸通信省航空局が主として警備救難業務を担当しており、水路業務は海軍水路局、航路標識業務は運輸通信省港務局が担当している。残念ながら海軍は相手方の都合が悪く調査を行うことが出来なかった。海上警察隊の司令部には30メートル型巡視艇等が数隻係留されていれ海上警察隊は警備救難業務の中心的な働きをしているように感じられた。タイでは訪問先で捜索救難業務および航路標識業務について日本からの技術協力の希望が寄せられた。
調査に当たって、両国の関係の方々に熱心に対応していただいた。また、面談の際パンフレット等により海上保安庁についての紹介に努めたが、多くの方に関心を持っていただいた。
終りに、現地でお世話いただいた在インド日本国大使館の廣瀬一等書記官、平野防衛駐在官、在ボンベイ日本国総領事館の中田副領事及び在タイ日本国大使館の上原二等書記官、大塚二等書記官に深く感謝申し上げる。また、調査をご支援くださった日本財団及び日本海事財団と調査の準備から全般にわたってお世話くださった海上保安庁国際課の皆様に深甚なる謝意を表する次第である。

 

 

 

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