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2. 会員からの手記

一. 里親・回想文
奈良県里親会会長 井藤兼治
今、想えば、大正末期から昭和初期であった。僻地(当時は)奈良県生駒郡北倭村(現在の生駒市)は平均4反命の棚田の半農地域で、生活は本当に貧しいものであった。長男、長女を残して、二・三男女の子弟は大阪の豪商へ番号や女中として、働きに出たものであった。残った家族は米麦百姓と竹細工の工員や内職で生活をして居たのである。
大阪に友人のあった父は周旋業の許可をとり、毎日のように、働きに出る人の就職先を捜しに出ていた。ある日、豪商の息子が自家で育てることが世間体悪く、困っているので、田舎で母乳の良く出る人があったら、毒消しでいいから少し足してもらい、粉乳で良いから育てて預けないかとお願いされたので、先ず、私の家であずかってみることとし、あり余る母乳を私達弟妹と共に、授乳して、育ったのである。

 

 

 

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