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2. 養育記録 橋田チヅ子

一. A子との出会い
初めて、A子に出会って三十八年が過ぎました。
目まぐるしい時代の移り変わりの中で、A子に出会えたのは、昭和三十二年の八月。その日は、炎天の灼けつくような暑い日でした。
当時の社会情勢は、現在のように豊かな暮しでは無く、生活は貧しくて、誰もが家族の生活を支える為に一生懸命でした。
そうした中で、幼くして、両親を亡くし、二人の兄に育てられておりましたが、三度の食事も十分になく寝て居ることで、空腹に堪え、近所の方々の差し入れで空腹を満たすと言う変則的生活でしたので、学校も欠席がちでした。当時の中学校の校長先生が心配されて、長欠児の対応について、相談を受けたのが機縁となり預かることになったのです。
もうすぐ夏休みに入るから、「御飯でも一緒に食べよう」と、軽い気持ちでその期間

 

 

 

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