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住民にもまた、住民の意思に基づいた住民のための行政を求める権利が保障されなければならないということでもある。
 首都地域において行われる実際の行政について考えても、首都地域に住む住民(これまでの計画では60万人と予想されている)の生活に関するさまざまな問題が生じうる。ゴミ問題、環境問題、上下水道、都市開発・土地利用問題、教育・保健問題、その他さまざまな問題がある。これらについて、仮に国が直接に地方行政を担当し、住民の意見反映の機会を認めずに行政を行うことになれば、実際上もきわめて重大な問題を惹起することになる。住民による意思反映の制度を整えることが必須であるように思われる。
 以上述べたことは、首都地域を国の直轄地とした場合のみでなく、地方公共団体に準じた特別の行政団体として組織した場合にも妥当する。すなわち、首都地域について、地方自治法上の地方公共団体ではなく、とくに都道府県ないし市町村とは別に、特別の行政団体を創設した場合でも、地方公共団体に長や議会の公選を要求している憲法上の要請、住民の憲法上の権利の要請、地方行政上の実際の必要性といった観点からして、住民の意思に基づく地方行政が確保されるような組織・運営が要求されると解される。そして、住民の民主的参加のための制度の創設は憲法上の要請とみなされ、したがってそれを充たさない特別の地方公共団体の設置は違憲となろう。

(3)首都地域の住民自治にふさわしい制度

 それでは、具体的にどのような組織・制度が要求されるであろうか。この点では、首都を新しく移転し、首都に見合った地方行政組織を創造するという特殊性を考慮すれば、憲法93条が地方公共団体に対して要求している議会の設置、長・議員の公選の要請は、首都地域の行政組織についてはすべてが妥当することにはならないと解される。このことは、首都地域が国の直轄地として組織された場合のみではなく、地方公共団体に準じた行政団体として組織される場合にもあてはまり、特殊な行政団体として特別の組織運営を設けることも許されると解される。したがって、最小限度の要請として住民の意思の反映のための制度、具体的には議会が設置されることが必要となろう。もっとも、そこでの「議会」は、アメリカにいう委員会制のように少数の議員を選出して執行機関の機能を合わせもたせたり、長を議会の任命制として長

 

 

 

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