第3章 ドイツの首都における地方行財政制度
廣田 全男
1 ドイツにおける連邦および地方自治の仕組みと現状
(1)多極分散型の国ドイツ
1990年10月31目、今世紀中には不可能と思われていた東西ドイツの統一が実現した。第二次大戦の敗戦によって分裂していたドイツは、人口約7,980万人、総面積約35万7,000km2の大国として、再び統一を果たしたのである、現在のドイツは、統一のために復活された旧東ドイツ地域の五州(以下、新川)を含めて、全部で16の州により構成されている。州の平均人口は約500万人、人口が最大のノルドライン・ヴェストファーレン州は約1,750万人、最小のブレーメン州は約68万人を数えるにすぎない。
実際は州ごとに異なるが、基本的にドイツの地方自治体は市町村(ゲマインデ)と郡(クライス)の二層制をとっており、現在、郡が426、郡に所属しない特別市(市町村の一種)が117、郡に所属する市町村が1万6,128を数える、その平均人口は、それぞれ約13万3,000人、約19万7,000人、約3,500人となっている(1990年12月末現在)。このように、地方自治体のなかでも圧倒的に多い郡所属市町村の規模はきわめて小さい。
わが国と対比してドイツは、多極分散型の国と呼ばれる。その背景には、領邦国家が割拠したビスマルク帝国成立(1871年)以前からの歴史的伝統や、ナチスの中央集権的支配体制に対するドイツ国民の反省がある。こうした伝統は、基本法(ドイツ連邦共和国の憲法)に保障された連邦制によって法的にも支えられている。
実際、ドイツの連邦機関は、連邦制を反映して国の全域に分散して配置され、かつての首都ボンや現在の首都ベルリンヘの集中は用心深く回避されている。三権の機関についていえば、ベルリンヘの首都移転計画が実現すると、連邦議会はベルリン、連邦参議院はボン、連邦政府はベルリンだが、連邦最高官庁(連邦大臣が最高責任者として管轄)はベルリンとボン、連邦憲法裁判所はカールスルーエというように分散配置されることになっている。
この例も含めて、後述するように、ドイツではつねに連邦制をふまえた国土の均衡