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3 小布施町における協働型まちづくりについて

長野県小布施町は長野市に近い人口1万2千人ほどの町であり、昭和59年から61年にかけて、町中心部の地権者らと町が連携して、町並み修景事業を実施した。この事業は、当研究会で議論された「コラボ財」の考え方をよく表していると思われる。そこで研究会では、小布施町の事業の調査を行い、現地を視察し事業の中心となった栗菓子製造企業、株式会社「小布施堂」代表取締役市村次夫氏との会見の機会を得た。ここではビデオなど研究会で活用した資料及び現地調査の結果をもとに、事業の経過と、市村氏をはじめとする小布施町の人々の考え方から、公の主体と私の主体がコラボレーションによって新たな価値を作り出す、まちづくりの新たなアプローチとなりうる点を紹介する。

(市村)昭和55年に父が他界して、Uターンしてきたのです。そのときまず工場が少し手狭になったので増築しなければならなかった。実はそのときにかなり考えさせられたのです。ここは私の住んでいる場所であり、別会社ですが酒蔵があり、酒屋の店があり、そういう中に小布施堂という栗菓子の工場がある。ここに工場を増築していくよりも、もし教科書どおりにやるならば郊外の工場団地に移転して、工場跡地は観光客相手の喫茶店や土産物屋にした方がよいのではないか。その方が外の工場の方の土地の含みも上がる。ただ、そこで待てよと。工場といってもいろいろな種類、業種がある。我々の菓子の工場は、嗜好品の工場である。それに例えば私が前にいた化学会社の工場と同じ考え方でいいのか。また別の見方として、会社あるいは家業ということを離れて、小布施の町という一つのコミュニティを考えていくとき、観光客の収容能力だけを増やして、工場を移転し、やがて私も別の場所に家を建ててそこから通うというようなことになれば、小布施は一種のテーマパークになっていくだけで、それはコミュニティではないのです。そんなことを考えていくと、もしかしたら法律や世の中の流れが間違っているのかもしれない。やはり町のおもしろさというのは、生産活動がある、それから消費生活がある、それから商業活動がある。そういったいろいろな機能が

 

 

 

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