距離にあることが、そこでの官僚の恣意的な裁量を抑えうるとも言われている。これが生産効率性を高めることにつながるのである。これらのことが、分権化をすることによって、配分効率性と生産効率性の2つの側面から資源配分の効率性を高められると考えられる点である。
(3) 地方分権と「足による投票」
上記に加えて、地方分権化のメリットを発揮させるには、足による投票(地域間の住民の移動)が重要な条件になる。これは地方公共財に対する自分の好みに従って住民が地域間を自由に移動するという仮説であり、経済学では「ティボー・モデル」とか「ティボー・ソーティング・プロセス」と呼ばれている。ちなみにティボーとは、足による投票を最初に論じた学者の名である。分権化によって選択肢が多様になると、人々は自分の好きなところに移動し、自分の好きなところで財・サービスの供給を受けることができるようになる。このため配分効率性はますます高まる可能性がある。また自由な移動(逃げる自由も含めて)は、地域間競争を激化させる要因にもなる。もし各地方政府が提示するサービスメニューに住民が敏感に反応し、少しでも有利な地域へ移動しようとすれば、各地方政府はもっと魅力的な選択を提示して住民を引きつけなければならない。あるいは下手なことをすればすぐに住民に逃げられてしまう。こうした状況が地域間競争を促し、その結果政府の生産効率性が上昇する。このように分権化のメリットを発揮させるには、移動の自由という条件が重要であり、これがない状態ではメリットも多少割り引いて考えなければならない。
(4) 最適な都市規模の決定要因〜どのレベルでの分権化が望ましいか〜
分権化の意義や、メリットを押さえた上で、経済学の観点から見て、どのレベルまで分権化するのが望ましいかという問題を考えてみる。介護サービスを例に取って考えてみよう。例えばホームヘルプサービスを提供する介護ステーションの便益の及ぶ範囲を考慮して、その範囲で1つの行政区または地方政府を決めるとする。