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日本経済を支える貿易と海上輸送

社団法人日本貿易会会長 室伏稔

 

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一九九五年(暦年)の日本の貿易額は輸出が四四三〇億ドル、輸入が三三六〇億ドル、輸出人合計が七七九〇億ドルとなっており、四○年前の一九五五年には、わずか四五億ドル(輸出二〇億ドル、輸入二五億ドル)だった貿易額が、実に一七〇倍にも達している。特に輸出については二二〇倍、輸入は一三五倍で、まさに戦後の日本が貿易立国、輸出立国であったことを示している。
一方、貿易の拡大には、海運業界の助けが必要であったことはいうまでもない。この貿易の拡大を支えている海運の現状を見ると、一九九五年の日本の輪山人貨物はトン数にして、輸出が一億一七○○万トン、輸入が七億七二〇〇万トンである。このうち航空貨物はわずかに輸出が九○万トン、輸入が一、二〇万トンにすぎず、殆ど日本の貿易は海上輸送に依存しているのが現実である。貿易船の年間入港数は六万隻、純トン数四億一二○○万トンという巨大な海上輸送力が日本の貿易を支えている。
また、造船技術の進歩にも日覚しいものがある。まず、一方トン〜二万トンのリバティー船(フリーダム型)から始まり、PANAMAX、Ore/oil、特殊船としてのVLCC、コンテナー専用船、自動車専用船、ダブルハル・タンカーなど、経済のニーズに応じた世界最先端の造船の技術革新をあげることが出来る。さらに五○ノットの高速船「テクノスーパーライナー」が活躍する日も近いと思われる。
このように日本の海運業界と造船業界が連携して技術革新努力をしたことによって、安全で低コストの海上輸送が可能になったのである。従って、貿易の拡大によって日本が奇跡とも言えるえる経済成長を遂げることが出来たのは、海運業界と造船業界の努力のおかげであったといっても過言ではない。
しかし一咋年の版神大震災以来、コンテナーのオペレーション機能をプサンや高雄に移し、そこから消費地の近くの地方こ港に小出し輸送するというケースが増加しており、今後のアジアの港湾インフラ整備に伴い、海上輸送、物流においても日本バイパスの懸念がでてきている。日本経済の空洞化の防止と貿易拡大のために、神戸港の復旧ともに、アジア・太平洋の海上輸送のハブとなるような、わが国の港湾インフラ整備が急がれる。

 

 

 

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