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アジアに拡がる港湾競争

社団法人 日本船主協会常務理事・調査広報部長
植松英明

 

追い上げられるアジアの?小竜?
香港とシンガポールとがそれぞれ年間一二〇〇万個ものコンテナを取扱い、コンテナ港湾として世界の一位、二位であることは既に常識であるが、両港の非常に高い年々の伸びには鈍化の兆しがあるようだ。一九八八年からの七年間の年平均の伸び率は香港一八%、シンガポール二○%であったが、一九九五年には両港ともに二二%に低下している。
香港の場合には、現有コンテナ・ターミナルの能力の限度に近付いたという一面もあるが、中国南部のコンテナ港湾整備が進みつつあり、例えば上海が九四年の一一九万個から九五年には一五三万個へと二八%もの伸びを遂げていることの影響もあるようだ。
シンガポールでは港湾当局自体が、数年後には伸びが一〇%を切ることになると予測している。少し先には隣国マレーシアのクラン港一将来的にはフィリピンのスービック湾港、ベトナムのブンタオ港、インドネシアのバタム港が、今はシンガポールに集中している税替え機能に食い込んでくることが、視野に入っているようだ。実際九五年には、クラン港が一一三万個を取扱って二〇%の伸びを示した。この年のシンガポールの取扱い数一二五〇万個のうち二八%に当たる三五〇万個がマレーシアの輸出入コンテナであるから、同国政府が自国港湾からの直接輸出入促進方針を打ち出していることの、将来に向かっての影響は大きいであろう。
台湾の高雄港は、中国出し、中国行きコンテナを中心として東アジアのコンテナ積替えセンターとなるべく指向している。中台間の直接交易に先立って先ずこれが現実化するとすれば、遠からず香港、シンガポールの様替え機能に相当大きな影響を与えよう。
韓国の金山港は九五年に一八%伸びて、既に年間四五〇万個以上を扱う犬港湾であるが、近くの島で新コンテナ・ターミナル建設に来春着工の予定で、工事、運営、ソフトの各般にわたってシンガポールに助言を求めているという。
入港税を値引きしたシンガポール
小数の港のみが強者であった時代は終わり

 

 

 

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