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気になる話題

日本外航海運は消えない変化に通用する法・行政体系を

川崎汽船株式会社 川戸満夫

 

司馬遼太郎氏描く幕末の“海”
今年二月作家司馬遼太郎氏が逝去された。享年七十二歳であった。氏の数ある作品の中で、海運に関係のあるものには、『菜の花の沖』『竜馬がゆく』などがある。
『菜の花の沖』は、北前船の船主で、豪商高田屋嘉兵衛の物語。日本海における最初の定期(ライナー)航路ともいうべき北前船の発展の歴史を読み取ることが出来る。
また、『竜馬がゆく』の中で司馬氏は「神戸海軍操練所は当初勝海舟の私塾の性格から脱しておらず、坂本龍馬がその地に着いた時、練洲船・機材・燃料などの日処もづいていなかった。(中略)言わば現在の神戸商船大学の前身と思えば間違いない」と書いている。
いずれにせよ「司馬は海洋と海の経済流通の関係が好きだった」(文芸評論家永尾崎秀樹と近代文学者谷沢永一との対談)。

 

「勝」や「竜馬」のような人材が欲しい
ところで、日本はこの百年、日本列島改造ブームによる上地の高騰、オイルショック、バブルの崩壊などの脱線もあったが、欧米に追いつけ迫い越せと一直線にやってきた。日本の官僚は優秀ではあるが、アルビン・トフラーの言うように「机の上だけで物事を考えていると、歴史の変革時には過去の経験則が通用しないことに気付かす、成功経験を踏襲してしまう」ようだ。視点を何処に据えるかが非常に大切なことなのに。
司馬氏は死の直前まで、この国のゆくえを深く心配していたという。社会が変化しているとはいえ、将来を身据えた政策によって法体系を再構築していくのは、官の内側からのアクションとして行うのは非常に困難な作業であろう。だからこそ今、官からは「勝海舟」が、民からは「龍馬」が「桂」が「西郷」が出なければならないのではないか。

 

テレビで紹介された“日本海運の現状”
翻って海援隊当時から百二十年を経た現在、我が日本外航海運の気になる話題とは一体何か。最近、海運関係のテレビ番組が放映されたが、ご覧になった読者の方も多かろう。一つはTBS報道特集「滅びゆく日本船」、二つはNHK衛星放送「日の丸商船隊が消える」、もう一つはNHKプライム11「巨大船舶解体場」で、いずれも一時間を費やしたもの。滅ぶ、消える、解体、と言葉は穏やかではない。タイトルを見る限り日本の外航海運は無くな

 

 

 

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