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して、わが国輸出人貿易に対し一貫して安定した輸送サービスを提供してきた。現在わが国海運企業が実質所有支配する仕組船なり便宜置籍船は、数カ国にわたり千数百隻も存在する。
そうした仕組船や便宜置籍船の利用が、さらに所有国が世界的に拡散している外国船の単純用船までも、まったく不可能になるような非常事態の発生する確率は、現代の世界海運では限りなくゼロに近い。それだけに、一定規模の日本籍船を国民的負担において維持することの必要を社会に納得させるのは、非常に難しい。
しかし、日水人船員の存在価値と必要性については、疑問の余地はないだろう。
高度の専門技術と豊富な乗船経験を必要とするハイリスクな船舶や高知能化船の乗組員までも、船機長を含め、すべて外国人船員に依存することに不安がないと言えるほど、低賃金国船員の専門技術や資質はまだ高まっていない。また、今後信頼できる水準まで向上するだろうと楽観できる材料もない。
一方、陸側において、外国人船員の雇用に際して彼らの専門技術能力を評価し、追加的トレーニングの必要のいかんを判断し、またマシニング会社や船舶管理会社から派遣される外国人船員の専門技術能力を的確に評価するためにも、さらに運航船隊の管理上の問題に的確な判断を下し、陸上からフル配乗船や混乗船に迅速な指示を与えキメ細かなコントロールをする上でも、十分な専門技術能力と豊富な海上経験を有する船舶管理者を不可欠とする。この職域までも、将来外国人の船員経験者に頼ることになんの不安もないと言えるような見通しも、もちろんない。
したがって、わが国海運産業が日本商船隊を維持し、安全な海上輸送サービスを提供していくためには、少なくとも日本人船員の配乗を必要とする海上職域を満たし、さらに陸上の船舶管理要員となる日本人船員を保持していなければならない。このカンパニー・ミニマムを維持できなくなれば、海運業経営の基本的な部分である船舶の所有のみならず、船員部面でも、いよいよ全面的に外国に依存することになり、健全な海運企業経営を維持していくのを脅かされる。この結果、やがて日本商船隊の運航基盤であるわが国海運産業は一段の衰退を余儀なくされ、国家的願望である安定輸送手段の確保が一層困難になるだろう。
こうした視点から、「一定規模の日本人船員が必要である」という主張は、現段階では「安定輸送手段の確保」という従来の論拠よりも説得力がある。

 

国家助成の論理
しかし、日本海運を取り巻く国際海運情勢は、運賃の上昇を抑制する諸要因がますます勢力を増す方向に館いており、このためコスト水準の引下げ圧力がこれまで以上に強まると考えられる。この自然な成り行きとして、わが国船社は好むと好まざるとにかかわらず、『脱日本』の動きを加速することになるだろう。
この結果、安定輸送手段の確保、その他の国家的利害との関連で、国家的不安が高まることになる。そのため、ナショナル・セキュ

 

 

 

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