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の国民が六割乗っていたら、完璧にそこの世界になってしまう。言葉も文化も食べ物も。例えば「飛鳥」も、英語の世界にしたら、日本人が乗らなくなるでしょうね。「オイローパ」という船は全部ドイツ語ですね、メニューまで。神妙な顔をして、ドイツのクラシックの音楽を聞かせたりする。だから、文化が支配するんですよ。日本籍船で日本語が支配する船には外国人は余り乗ってこないと思います。最近はシンガポールやマレーシアを中心とした短いクルーズも盛んになってきましたが、狙いはカジノですよ。
上田 そうですね。カジノとファミリー層。
ファミリーにはカジュアルな楽しさをという感じで、すごくいい子供用の施設、二四時間保母さん付きのがあります。賭けとファミリーの棲み分けがうまくできています。
それから、アメリカ人の船客から「一人暮らしや年輩の夫婦だけで暮らしていると、クルーズは大きな楽しみだ。整えられた部屋と食事があり、医者もいる。何よりも船上にはぬくもりと出会いがある」と開きました。
宮岡 「クリスタル・ハーモニー」にアメリカ人の金持ちばかりが乗っているかというと、そうではない。ライフスタイルの差じゃないでしょうか。船客の平均年齢は六五歳、六割がリタイア、残りが現役で、平均年齢五三歳。収入は、年取一〇万ドル以下が九八%、五万ドル以下が二〇%です。アメリカ人は子供に金をかけずに、自分たちで金部使ってしまう。日本人とはそうしたライフスタイルがかなり違いますね。ですから、彼らは年に一回二週間ぐらいの旅に夫婦で行く。それが人生の楽しみということになっているわけです。
上田 一部のお金持ちの楽しみではないですね。日本も高齢化、核家族化の時代を迎え、今後はクルーズがシルバーの方の大きな楽しみとして意義をもってくると思います。
宮岡 例えばオセアニアクルーズは百万円で三五日かけて、これまで行ったこともないところが見られる。家にいても二、三十万円はかかることを考えると、働いてばかりで、人生を楽しんでこなかった方々には非常にいい楽しみと思います。当面はゆとりのあるシルバー層を対象として考えています。短いものは若い方に乗っていただいて船旅の楽しさを知ってもらい、彼等が歳をとると、長いものに乗ってみようとなるのが望ましいですね。

 

自然に囲まれ伸び伸びと
上田 それから、日本でクルーズが今一つ盛り上がらないのは、船酔いに対する恐怖心が足かせになっていますね。
宮岡 船会社も、“大丈大です、揺れません”と言うが、それは間違っていると思うんです。
“多少揺れることもあるけれど、台風にでもぶつからねばすごい揺れはない”と言い替えるべきです。特に横揺れはフィンスタビライザ等で抑えるとか……。又最近は気象予報が発進したので台風を回避出来るし、薬も昔に比べていろいろ出ていますからね。
上田 最後に日本外航客船協会の会長さんとして、今後の課題などはいかがでしょうか。
宮岡 やはり、一人でも多くの船旅をしてもらいたい。あの楽しみを知らないで人生を終わるのはお気の毒です。海原で見る日の出や日没は素晴らしいですよ。夜の星空もこんなに星があるものかと信じられないくらいです。
上田 陸上のしがらみから解き放たれ、自然に囲まれて、伸び伸びと一時を過ごす、こういう開放的な旅を、ぜひ多くの方に知ってもらいたいと思います。それから出会いの楽しみもありますね。車椅子や杖をお使いの方で、もう旅行はできないと長年あきらめていた方でも、クルーズ客船ならば一度乗ってしまえば、体と荷物ごと運んでくれる。ぜひ旅の楽しさを取り映していただきたいと思います。
宮岡 飛行機の旅はそうはいきませんから。船なら、部屋に入れば自分の家と同様だし、荷物も宅配便で船へ送れるから、家から運ぶ必要もありません。
上田 その意味でも、広く船旅のよさを知っていただきたいと思います。

 

 

 

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