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の場合年間9,000クローネ(約22万円、1クローネ=約24.4円(1991年))であり、2人ならば18,000クローネ、3人の場合は加算されて通常の50%増しの31,500クローネ、4人の場合は100%加算されて49,500クローネとなっている(National Social Insurance Board "Social Insurance Statistics, Facts, 1991")。さらに、子供が16歳以上になっても、義務教育期間中は「延長手当」が、大学等に在学していれば「奨学手当」が所得制限なく支給されるこれらはすべて国庫負担となっている。
また、子供が病気の際に看護のために仕事を休んだ場合の手当や、離婚率が高まる中で、孤児や単親家庭を援助する手当、離婚家庭に国が差し当たって金銭的援助を与え、後に養育費用を負担すべき者(通常父親)に求償する制度等も整えられている。
(保育の社会化)
働く両親に代わって子供を育てるための制度として、就学前の子供ためには、6時半から18時半まで開いている保育所(6,697か所、1990年)、時間制保育の幼稚園(1,770か所)があるが、子供を持って働く女性が増加し、保育所不足が深刻となった。そのため、一般の家庭で0歳から12歳までの子供を自分の子を含め4人まで日中預かる制度(29,307の家庭)も準備されているまた、就学後の低学年の児童についても、授業のない時間や休暇中のために「学童保育所(2,865か所)」があるほか様々な活動が行われている。
さらに、主婦が出産や病気のとき主婦の代わりをするサービスや、子供が軽い病気で学校に行けないとき、親に代わって世話をする制度も作られているなお、1980年代に入って、育児休暇制度が充実し、所得を失わずに両親が休暇を取ることができるようになったため、これらの利用は減少傾向にある。
(家族政策の影響)
1990年のスウェーデンの合計特殊出生率は2.14となり、出生件数でみても1981年を最低に増加し始めている。国連のアンケート調査(第I−5−27表(2))においても、1989年からは出生率について従来の「低すぎる」から「満足している」と認識を変えている。
また、6歳以下の子供を持つ女性の就業率は86.9%、7〜16歳については94.4%、女性全体でも82.6%となっており、男性全体の87.0%との差は小さい(1987年)。1972年の育児休暇法制定の後、家族を取り巻く制度がますます発達し、また、育児休暇を取ることも当然の権利として受け入れられるようになってきている。
スウェーデンの例は、子供を育てる家族に対して、社会が十分な育児休暇や手厚い家族手当等経済的裏付けを与えることにより実質的に支援し、子供を社会的に育てていく方向を示したものである。
離婚や婚外子の増加は「家族の崩壊」としてとらえられているのではなく、過去の人口政策論議の中でも、結婚や出産は徹底して個人の選択であるという観点から議論されており、また、結婚は生活形態のうちの一つという受けとめられ方をしている。こうした意識を背景に、子供が生まれてから婚姻届けを出す者も増加してきており、平均初婚年齢が平均第1子出産年齢を上回るという現象が起きている(第I−5−30図)。

 

 

 

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