日本財団 図書館


 

はじめに

 

昭和50年代以降低下傾向にあったわが国の合計特殊出生率(1人の女性が一生のうちに生む子どもの数。人口を維持するためには、2.08が必要。)は、平成元年には1.57にまで低下し、昭和41年の丙午年の1.58を下回ったことから、「1.57ショック」として大きな問題になった。さらに平成7年には、合計特殊出生率は史上最低の1.42を記録している。

このような急速な少子化の進行を背景として、平成に入ってからは、子育てに対する社会的支援のあり方について、様々な措置が実施されるようになった。

国においては、平成6年には、文部、厚生、労働、建設の4大臣合意による「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン)が策定され、今後の子育て支援の基本的方向と重点施策が示された。また、児童手当の拡充を内容とする児童手当法の改正や育児休業法制定(平成3年)等の措置もとられている。

地方公共団体においても、子育て支援に積極的に取り組み、子育てしやすい環境づくりに力を入れるところが急増しているそこで、今回の事例研究では、その先進的なものを取り上げ、今後の施策のあるべき姿について検討する。

1 石川県 急速に進行する少子化社会に対応するため、「子育て支援課」(平成8年度から児童家庭課が改称)が中心となって、働く女性に対する支援策(フルタイム就労支援事業等)や、子育て中の父母を支援するための「子育て家庭文化活動サポート事業」等を実施している。また、平成8年度には、「いしかわ子育て支援財団」を設立し、従来以上に弾力的な子育て支援を行っている。

2 宮崎県 宮崎市市内の保育所(85カ所)の中で民間保育所(71カ所)の占めるシェアが高いこともあり、「利用しやすい保育所」づくりのための保育行政が積極的に推進されている。特に平成7年度には、全国初の「休日保育サービス」を市単独で開始している。

3 東京都武蔵野市 家庭で子育てをしている若い父母を支援するため、平成4年、保育園・幼稚園に通園していない乳幼児(0歳から3歳までの乳幼児)とその親を対象とした公立のコミュニティ施設(0123吉祥寺)を開設している。この施設では、子育てについての相談、情報提供、親同士の交流等様々な活動をしており、新たなタイプの乳幼児施設として注目されている。

4 茨城県日立市 子育ての援助をしたい人(協力会員)と援助を受けたい人(利用会員)がグループをつくり、利用会員の必要に応じて協力会員が保育サービスを提供するという事業(ファミリー・サポート・センター事業)を実施している。これは、既存の施設保育では対応できない様々な保育需要に対応するため、主婦等のボランティア活動から始まったサービスである。

なお、各事例の紹介に当たっては、いわゆる少子化対策に関連する分野が幅広いことから、各団体における特色ある子育て支援に関する取組みに限定して取り上げている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION