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国的に展開していく必要がある。
農業生産に強い影響力をもっている農協が環境保全型農業に対してどのように取り組んでいるかを、全国農業協同組合連合会が行った「環境保全型農業実践事例調査」(平成5年3月)によってみると、7割を超える農協で何らかの取組が行われている。具体的には、「有機物等を用いた土づくり」(72%)、「合理的輪作や適切な作期・作物の組合せ」(42%)、「減農薬・減化学肥料農業」(38%)、「有機農業」(30%)等となっている。
また、堆肥センターの設置や、堆肥のあっせん等の「畜産と耕種との連携」に取り組む農協の割合は32%となっている。肥料の生産量の推移をみると、化学肥料を主体とする普通肥料の生産量が横ばいないしは微減となっているなかで、堆肥の生産量は急速に増加してきており、家畜ふん尿の有効活用の進展がうかがえる。
今後、環境保全型農業を推進していくうえで労働時間の増加、単収の低下を伴うことのないよう、土づくりを基礎としつつ天敵の利用等を導入した最適な農法の開発・普及、家畜ふん尿等のリサイクルのためのシステムの構築、施肥・防除要否の判断基準の見直し等環境への負荷の軽減に向けた条件整備を行うことが重要である(図?U−35)。また、このような農業による様々な環境保全への取組に対する消費者や実需者側からの適正な評価も必要である。

図?U−35 環境保全型農業の推進の内容

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(有機農産物等の流通上の課題)
環境保全型農業の一形態である有機農業等への取組は、近年高まっている消費者の環境や安全性に対するニーズヘの対応という側面もある。例えば、都内の消費者を対象に行った調査によれば、回答者の9割以上が有機農産物等の野菜を「積極的に」もしくは「条件が合えば」、「品物があれば」購入したいとしており、その理由として8割が「健康によさそうだから」、7割が「安全そうだから」をあげている。また、こうした消費者の志向に対応して、近年、外食産業や食品製造業において、経営上の差別化戦略の一つとして、有機農産物等を原料に用いる企業も現れてきている。
有機農産物等の生産は、小規模な産地での多品種・少量生産によるものが多く、規格化も難しいため、卸売市場を通じた流通で扱いにくく、販路の確保が問題となることが多い。
「農協調査」と「食品産業調査」によれば有機農産物等の取扱い(生産)上の問題点(複数回答)として、農協、食品製造業、食品小売業のいずれも「安定的な量の確保ができない」が5割を超え、大きな問題として受け止められている(図?U−36)。しかし価格面については、「コストや収量減に見合う価格になっていない」とする農協が7割に達するのに対し、食品製造業、食品小売業では「通常栽培に比べて価格が高すぎる」がそれぞれ約6割、約4割と対照的な結果となっており、意識に大きなギャップがみられる。また、食品小売業は「卸売市場での取扱いが少ない」との回答の割合が高く、流通経路の確保の問題を反映しているものと思われる。
このような事情もあり、現在、有機農産物等を生産、販売している事例をみると、卸売市場を経由しない直接販売や契約栽培を通じて販売される場合が多い。例えば、岡山県高松農協では、もともと自家菜園で始めた有機栽培による野菜の販路として、農協婦人部が主体となった朝市での販売から、消費者グループとの契約取引、デパートとの直接取引へと発展している。

 

 

 

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