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はじめに

近年、国民の意識は、労働時間の短縮による余暇時間の増大、ライブスタイルの多様化等により変化してきており、「物的な豊かさ」よりも「うるおい」や「心の豊かさ」を重視するようになってきている。
さらには、都会では得られない自然環境を農山村へ求める都市住民のニーズの高まりが見られる。
このような中にあって、農山村を食糧生産のための空間としてだけでなく、多様な生活空間として生物資源・環境資源のある空間として評価し、その多様性を保全していくことが必要になってきている。
しかし、こうした地域の多くは、地域の担い手である若者の流出と高齢化の進行による活力の低下に悩んでおり、さらにガットのウルグアイ・ラウンドの農業合意に基づく農産物の自由化実施等により地域を取り巻く環境は厳しいものがある。
そこで、地域の固有の資源である自然環境・景観を積極的に保全・活用しながら、地域振興を行っている事例を通じて、自然環境にやさしい地域振興について検討する。
1 北海道美瑛町:
豊かな大自然と波状丘陵農地の保全によって、自然景観資源を守り、地域の活性化につなげるため、「美瑛町自然環境保全条例」を制定している。
また、「美瑛町景観条例」を制定するとともに、「街づくりマニュアル」を作成し、景観と調和した町並みづくりにも力を入れている。さらに、(丘の町びえい/景観ガイドプラン」を作り、積極的に今後の美瑛町全体の統一したまちづくりの方向を示している。
2 山形県朝日町:
21世紀に向けた新しい町づくりの基本理念を「自然と人間の共生」とし、平成2年「地球にやさしい町」を宣言。フランスで発祥したエコミュージアム構想を町の総合計画に導入し、行政と住民が一体となって地域の活性化に力を入れており、環境関連のシンポジウム等も開催している。
3 岡山県美星町:
流れ星伝説と、美星町という町名にふさわしい美しい星空を活かし、「星の郷づくり」を行っている。具体的には、美しい星空を守る美星町光害防止条例を制定し、野外照明の規制等による光害防止を積極的に行うと共に、「星の降る夜」等の夏期のシーズンイベント等を開催している。
4 宮崎県綾町:
照葉樹林を保全するため、「綾町の自然を守る条例」を制定し、自然生態系を生かし育てるまちづくりを行っている。また、「綾町自然生態系農業推進に関する条例」を制定し、自然生態系農業の推進・拡大に力を入れ、有機農産物の認証制度を設ける等、有機農業の振興を図っている。

 

 

 

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