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ては、農業生産の担い手をいかに幅広く確保していくかが重要な課題である。
この場合、農地の投機的な取引の防止等により農地の農業上の有効利用は確保しつつ、株式会社を含めて新たに農業を行おうとする意欲のある者の農地の権利取得を認めることについてどのように考えるのか十分な議論が必要である。
また、新規就農者を含めた農業の担い手の広域的な募集、技術経営研修及び就農条件の整備のあり方や、いわゆる集落営農、農業サービス事業体等の位置付けについても更に議論を深めていく必要がある。さらに、農業生産活動において重要な役割を担う女性農業者を担い手として明確に位置付けていくための措置についても検討する必要がある。
なお、産業政策的な視点からは、種々の施策は専業的な農家に集中し、小規模兼業農家は施策の対象から外すべきであるとの考え方があるが、この点についても十分な議論が必要である。
<中略>
(8)農村地域の維持・発展
農村地域は、全般的には、過疎化や高齢化の進行により地域活力が低下し、社会における相対的比重が低下している。特に、地理的条件等から農業の生産条件が不利な上に、就業・所得機会、生活の利便性等にも恵まれていない中山間地域等では、地域社会の維持が困難となるところも現れている。また、土地利用の実態をみると、農地のスプロール化等士地利用の混乱が生じており、優良農地の確保や国内の食料供給力の確保の観点からの問題も生じている。
しかし、一方で、近年の国民の価値観・生活様式の多様化や、余暇時間の増大を背景として、農村地域は、農林業の生産の場や地域住民の生活の場としてだけではなく、国土を守り環境を保全する場や地域特有の文化、伝統等を育む場として、さらには景観や緑、水寺に恵まれ安心して過ごすことのできる余暇・生活空間として、その評価が高まってきている。また、大都市への過度の人口集中を防止し、国土の均衡ある発展を図る観点からは、個性や独自性を生かした多様性のある農村地域の維持・発展が期待されている。
このような中で、今後の農村地域の振興に当たっては、これまでのような農林業の振興や都市との格差是正に重点を置いた生活環境の整備のみならず、地域資源の活用や秩序ある土地利用、情報通信の高度化等を図りながら、都市住民等にも開かれた特色ある快適な農村空間を創出していくとの観点から、地域全体の活性化や農村の整備を進めていくことが重要となっている。この場合、混住化の進行や地域経済における農林業の地位の低下等を踏まえると、必ずしも農林業施策のみによって農村地域の維持・発展が支えられるものではなく、各省庁における各種施策の展開をも視野に入れた対応が不可欠となっている。
これらのことを踏まえ、今後の農村地域政策の推進に当たっては、以下のような点につき、十分な議論が必要である。
?@中小都市と周辺の農村を地域として一体的にとらえ、その人口や産業・社会活動を積極的に維持し、地域全体としての振興を図るという地域構造政策の視点を、農林業施策と各種施策の総合的な推進に当たって、

 

 

 

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