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はしがき

 

地域社会の中心的役割を担う地方公共団体がその機能を十分に発揮し、住民に提供する行政サービスの充実を図るためには、行政の実際の担い手である職員の資質・能力の向上がますます重要となってきている。地方分権の推進が今やまさに実行の段階を迎えていることからも、職員には単なる知識、技術の習得にとどまらず行政のあるべき姿を的確に把握する等の総合的な問題解決能力及び幅広い識見等を有することが強く求められている。
このようなことから、今日、地方公共団体はそれぞれ職員の資質向上のため研修の充実や自己啓発の促進等によって、実務能力や政策形成能力をはじめとする職員の能力開発や意識改革、意欲の向上等に努めてきているところであるが、今後、厳しさを増していく行財政環境の中で、特に基礎的な地方公共団体である市町村においては、時間的、財政的制約等から職場外研修について必ずしも十分な実施ができにくい状況にあることから、日常的に職場内において職務を通じて行われる職場研修を人材育成の中核に位置づけ、より実効ある職場研修を実践し、職員について、的確な事務処理能力や課題の発見・解決能力等の開発を推進していくことが求められている。
しかしながら、課題の発見・解決能力を含め政策形成能力をはじめとする高度の能力を職場研修を通じて実践的に育成していく体制づくりについては従来明確な方法論がなく、このような視点から職場研修を実施することを検討しつつも、実際には取り組み切れないでいた地方公共団体も少なくなかったというのが現状であると考えられる。
そこで、当協会の地方自治研究資料センターでは、地方公共団体における職場研修の推進方策、とりわけ職場研修を通じた実践的な政策形成能力の育成方策について、問題点を抽出し、今後、地方公共団体が、地方分権の進展や行政改革の推進を視野に入れながら、職場研修を導入し、効果的に実施していくに当たって指針となる職場研修のマニュアルの作成等を検討するに際しその参考を提供できるよう検討を行った。
研究の方法としては、学識経験者による「地方公共団体における職場研修の推進方策に関する研究会」を設置し、地方公共団体に対するアンケート調査やヒアリング調査を実施しつつ、討議、分析し報告書にまとめた。
この報告書が、今後各地方公共団体の研修の一助となれば幸いである。
この研究を進めるにあたり、研究会の座長をお願いした砂子田隆地方公務員共済組合連合会理事長をはじめ委員の方々の熱心なご指導と自治省行政局公務員部能率安全推進室及び調査にご協力いただいた地方公共団体の方々の多大なご支援に厚く感謝する次第である。
また、この研究に対し、日本財団から研究資金の助成をいただいたことに深い謝意を表したい。

 

平成9年3月
財団法人 自治研修協会
理事長 松島五郎

 

 

 

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