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?. 中間宿主貝(Neotricula aperta)採集調査とメコン住血吸虫感染実験

概要
1995年に採集調査を行った5つの地域で、再び採集を行った。そのうちDon Khongの貝と、コーン島から約120?上流であるHouaygnang-Noyの貝を用いてメコン住血吸虫の感染実験を行った。実験に用いたメコン住血吸虫はNadi村のメコン住血吸虫症患者の糞便、またはマヒドン大学Dr.Virojより譲り受けた感染マウスから得た。

 

採集場所中間宿主貝(N.aperta)の採集調査は、1996年4月30日から5月4日にかけて行った。調査地域の概略を図1に地図で示した。

 

方法と結果
中間宿主貝の採集は各地域の川中の岩場、または植物の繁る場所で実施した。水上の移動には現地の漁師を雇い入れ、その船を利用した。水中の石や木の枝に付着している貝をブラシまたはピンセットでバケツに回収した。中間宿主貝(N.aperta)は、調査した5地域すべてで採集できた。そのうちDon Nangloyでは貝殻の模様からみてalpha-raceと見られる貝が主に分布していたが、その他の4地域ではgamma−raceが主体であった。
ミラシジウム感染実験には、Nadi村における糞便検査でメコン住血吸虫卵が検出された2名の糞便と、Nadi村のイヌを2頭入手してKhong村に持ち帰り実験材料とした。中間宿主貝としてはDnoKhongの貝とHouaygnang-Noyの貝を用いた。イヌをケタミン注射により殺した後解剖したところ、いずれも感染が見られなかった。メコン住血吸虫症患者2名の糞便からミラシジウムを孵化させたところ若干のミラシジウムを得ることができた。そこでDon Khongの貝と、Houaygnang-Noyの貝を100個ずつ別の容器に入れ、それぞれに10個のミラシジウムを加えた。これらを持ち帰り観察を続けたがセルカリアの游出は見られなかった。
タイ国・マヒドン大学Dr.Virojよりメコン住血吸虫感染マウス1頭と感染貝(N.aperta、beta-race)5個を譲り受け獨協医科大学に持ち帰った。5月28日、感染貝から游出したセルカリアをイヌ1頭に24個のセルカリア(6月4日60セルカリア追加)を、ICRマウス10頭に10セルカリアを感染させた。この中でマウス2頭に感染が確認されたので8月14日に解剖し、3ペアーの成虫を回収した。また肝臓からミラシジウムを孵化させDon Khongの貝と、Houaygnang-Noyの貝16個にそれぞれ3ミラシジウムを感染させた。またタイより持ち帰った感染マウスは6月5日に解剖した。虫体は見つからなかったが、このマウスの肝臓内の卵からミラシジウムを孵化させDonKhongの貝と、Houaygnang一Noyの貝4個ずつにミラシジウムを3個ずつ感染させた。しかし貝への感染実験ではいずれもセルカリアの游出は見られなかった。

 

 

 

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