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?. バランガイSan Vicenteに新しく発見された貝コロニーの調査と殺貝

安羅岡一男
1996年10月、ボホールSCTによってSan VicenteのApao palawan swampの南西約1.5kmに新しい貝コロニーが発見された。この島では1982年に本協力計画が発足してから今日まで、すでに10コロニーが発見されており、新コロニーの発見といっても大変なことではない筈であるが、本症の根絶計画を標楴するタスクフォースとSCTにはかなりの挫折感を与えたらしい。9月にSCTのチームリーダーに就任したDr.Redullaは安羅岡への緊急書信の中で、これはわれわれの計画のset back(頓挫)だと書いた。
この新コロニーの地域は最近まで「ボホール畜牛会社」の所有で、その土地内に部外者が入ることは許されず、“no man's land”と呼ばれていた。SCTのメンバーも入ることはできず、中間宿主貝の調査もまったく行われずに経過していた。ところが、最近ここが政府の農地改革地域となり、個人に3ヘクタールずつ分譲販売された。その新しい農地主となった一人にたまたまバランガイの職員がおり、この職員が自分の土地内の住血吸虫の調査をSCTに要請してきた。見学専門のMr. Pangilinanは同僚とともに現地を調査し、中間宿主貝100個以上を採集した。Dr. Redullaはレイテ島パロの住血吸虫症研究訓練センター(Schistosomiasis Research & Training Center, SRTC)から見学専門者を呼び、貝コロニーの調査を依頼した。彼らは中間宿主貝の棲息を確認し、また住血吸虫感染貝を検出したという。
このコロニーへのアクセスには、今はすでに養魚池に転換されているGaspar boggyの南側の道路を自動車で西へ精米所まで数百m進んで、そこで下車し、車両が入れない「けもの道」をさらに南に徒歩で1.5kmほど行かねばならない。クリークは低丘の間を西から東へ迂曲しながら流れ、長さ約150m、幅1〜6mで、深さ0.2m〜0.8mぐらいである。岸には不規則な凹凸があり、雑草が繁茂し、一部には灌木も茂っている。両岸に接するほぼ1ヘクタールの水田の畦にも雑草が繁茂している。携帯用の経緯度測定器によりこのコロニーの位置は北緯10度03,416分、東経124度18,422分と測定された。
棲息貝数は決して多くなく、密度(貝数/人/時間)は28.5であった。貝はクリーク内のみならず、水田内の畦近くにも見られた。採集した貝19個を圧砕し、2個(10.5%)に活発に運動する多数のセルカリアの感染が見られた。SCTは緊急的に1月に本バランガイSan Vicenteの住民593名を検査し、このクリークに近い農家に住む子供2名の虫卵陽性者を認めていることと併せて、本コロニーにおいて本症の伝搬が起きていることが確認された。
人夫5名を雇い、チームリーダーDr. Radulla以下SCTの男子6名が4台の自動草刈機と斧、熊手を使って先ず徹底的に除草と伐採によるClearingを行い、続いて殺貝剤ニクロサマイト20kgを手で散布した。かなりの数の泥魚が水面に現れ、それまでわれわれの作業を腕組

 

 

 

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