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?. まとめ

オリエンタルミンドロでは昨年度に引き続いて住血吸虫症の疫学と中間宿主貝学に関する精力的な調査が行われた。ビクトリアのSan NarcisoとナウファンのSan Pedroの2つのバランガイにおける各家屋の分布のスケッチマップを作り、家屋番号を付し、居住する住民の姓名、年齢および性を登録した。一方、年間罹患率調査のべースラインとして278名の学童から血清診断用の濾紙および毛細管採血を行った。本症患者の肝、脾、門脈壁の超音波所見と寄生虫学的ならびに免疫血清学的データとの関連についての研究も開始された。中間宿主貝が棲息する、いわゆるsnail colonyの経緯度測定が終了し、全48ヵ所のcolonyの正確な位置が判明した。22コロニーについて調査したところ、棲息密度が最高を示したのはビクトリアのMalabo Forest(160/man/hr)であった、12コロニーから貝は発見されず、住血吸虫感染がみられたのは僅か3コロニーに過ぎなかった。ビクトリアのMalaboにおける保虫動物宿主の感染状況の調査も引き続き実施されている。
一つの島から住血吸虫症の根絶を期して、これまで順調に進められてきたボホール島の対策プロジェクトに今年はブレーキがかかった。10月、トリニダドのSan Vicenteに新しい貝コロニー(Kangabok creek)が発見され、感染貝も見いだされたのである。1月には緊急的に実施された集団検便によってこの付近に住む子供2名に感染が認められた。ここは従来いわゆる“no man's land"といわれる私的所有地で、Bohol SCT(ボホール住血吸虫症コントロールチーム)の職員も立ち入れなかった地域であったが、最近の政府の農地改革政策によって1個人あたり3ヘクタールずつに分譲された。新しく地主になった人たちの一人がこのバランガイの職員であって、彼が住血吸虫症の調査をBohol SCTに要請したことがこの新コロニー発見の契機となった。SCTの要請を受けた安羅岡一男は2月にこのコロニーの見学調査と徹底的な殺貝作業を実施した。3ヵ月後の5月にも同様な殺貝作業が行われることになっており、8月には貝の完全殺滅を期している。
5月には1985年以来本協力計画のフィリピン側主任であったDr. Bayani L. Blas(保健省住血吸虫症対策局長)が定年退職され、後任にDr. Benefico Ducusinが着任した。
9月、長い間空席になっていたボホール住血吸虫症コントロールチーム(Bohol SCT)の医務官兼チームリーダーに、それまでボホール住血吸虫症根絶タスクフォースの議長だったDr. Apolinario D. Redullaが着任した。タリボンの副町長も務めた開業医で、セブのRHO−7の強い懇請をうけたらしい。なかなかの人材であり、活躍が期待される。
8月、安羅岡一男は科学ビデオ撮影チームを同行し、ボホール島とミンドロ島における協力計画の実施状況を撮影し、“SNAIL FEVER NOW -Philippines 1996-”を完成した。

 

 

 

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