日本財団 図書館


 

西日本広域津波計算システムの開発について

On the Development of Tsunami Simulation System for Wide area of Western Japan
南 兼一郎*, 平石 哲也**, 柴木 秀之***, 額田 恭史***
Kenichiro Minani, Tetsuya Hiraishi, Hidenori Shibaki, Kyoshi Nukata
*運輸省第三港湾建設局神戸調査設計事務所長
Chief of Koube Investigation and Design Office. 3th District Port Construction Bureau, Ministry of Transport.
**運輸省港湾技術研究所水工部波浪研究室長
Chief of lave Laboratory. Hydraulic Engineering Division. The Port and Harbour Research Institute, Ministry of Transport.
***(株)エコー第一技術部解析調査課
Analytical Investigation Section. 1th Engineering Division. Echo Co. Ltd.
KEYWORDS
Tsunami simulation, western Japan, Wide area, Nankaido coastal area, Osaka bay area. Sanin coastal area
ABSTRACT
Tsunami simulation system for wide area comprehends Western Japan is developed. Wide area system is constituted three local systems. Nankaido-System. Osaka-Bay-System, Sanin-System. The advantage of system is parallel computation for several research ports and coasts. Approximation of topography are used finer grids l/20 - 1/30 of tsunami wave length. Near-shore region in the computational areas are used grids of 200m, and port regions are used 50m. The use of fine grids are assures of high accuracy to simulated tsunami profiles. The computaion of discharge flux at the boundary of continuation with two regions, is composed of non-linear term. By this method. connectional boundary is located on the coast line or land, which is dominate of non-linear effect. With the applications of three local systems, hindcastings of Showa-Nankai-Earthquake Tsunami in the area of Nankaido System and Osaka-Bay System and hindcasting of Nihonkai-Cyubu-Earthquake Tsunami in the area of Sanin System are practiced. Computational distribution of maximum tsunami runup height are similar with the ones of inundation height.
1. はじめに
南海道、山陰に代表される西日本の海岸は、過去、幾度となく津波被害を受けている。特に、南海道沿岸は、1946年南海地震津波に代表される沖合の南海トラフを波源とする地震津波が100〜150年周期で発生し、日本有数の津波常襲地帯となっている。
このような状況下、西日本の海岸に点在する多数の港湾では。津波防災計画の総点検を行うことが急務と考えられている。従来より、津波防災計画に関する調査は、断続的に実施されているが、複数の港湾を対象とする統括的な津波防災の検討を行う手法は確立されず、個別の海岸・港湾に限定して実施されているのが現状であった。
そこで、西日本の海岸・港湾を多数対象とする広域津波計算システムの構想を計画し、これを新たに開発した。本報告では、開発した広域システムの設計概要をまとめるとともに、既往津波の通算を行い、現地適用性を評価する。さらに、システム利用の展望についても述べる。
2. 西日本広域津波計算システム
2−1. 広域システムの構成
西日本広域津波計算システムは、西日本の海岸に伝播する津波を数値シミュレーションにより追跡するための計算システムであり、西日本の海域を3つに分割する海域別システムにより構成されている。個々の海域別システムは、日本全国沿岸の海域別システムの1部として位置づけられるものであり、その設計思想及び解析手法は、柴木ら1)が南関東沿岸を対象に開発した津波数値計算システムに準拠するもので、データ作成、数値シミュレーション、結果出力・評価に至る一連の処理を簡単な操作で実施可能なように構築されている。
3つの海域別システムは、図-1に表す四国から紀伊水道までの約450?に及ぶ太平洋沿岸の海岸・港湾を対象とする南海道システムと、図-2に表す大阪湾沿岸の海岸・港湾を対象とする大阪湾システム、図-3に表す京都府から島根県までの約450?に及ぶ日本海沿岸の海岸・港湾を対象とする山陰システムである。ここで、図-2に表す大阪湾領域は、大阪湾システムの領域の一部であり、その外側に南海道システムと同範囲の波源域を含む外洋領域がある。
現段階における海域別システムの対象港湾は、南海道システムが、宿毛湾港・上川口港・須崎港・高知港・室津港・小松島港・和歌山下津港・日高港の8港、大阪湾システムが、神戸港・尼崎西宮芦屋港・大阪港・堺泉北港・阪南港の5港、山陰システムが、三隅港・浜田港・七類港・境港・鳥取港・柴山港・敦賀港の7港である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION