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瀬戸内海の地形変化に伴う流動環境の変化について

Effects of ToPograPhical Change on Environmental Conditions in Seto Inland Sea
田辺弘道、山崎宗広、宝田盛康
中国工業技術研究所
Hiromichi Tanabe,Munehiro Yamasaki,Moriyasu Takarada
Chugoku National Industrial Research Institute
Key Words:Osaka bay,Land Reclamation Project
ABSTRACT
The Effects of land reclamatin in Osaka bay in the future Was investigated by Seto Inland Sea Hydraulic Model.The land reclamatin in Osaka bay changed tidalresidual circulation and Water-mass exchange in the innermost part of Osaka bay.
1. はじめに
瀬戸内海は埋立等が進められその地形が変化している。その中でとりわけ大阪湾においては、これまでの埋立によってその地形が変貌し、また現在いくつかの埋立開発構想が提出され、それが実現すると将来においても更に大阪湾の地形は変化することが予想される。大阪湾の流動環境は、たとえ一つ一つの埋立によっては影響を受けなくとも、いくつかの埋立が集まるとそれによって流動環境に変化が生ずる可能性がある。本報告は、中国工業技術研究所の瀬戸内海大型水理模型を使用し、構想されている埋立が実現されたと仮定した場合に生ずる将来の地形変化の流動環境に及ぼす影響について検討した結果を報告するものである。
2. 実験
中国工業技術研究所の瀬戸内海大型水理模型の縮尺は、水平縮尺1/2000、鉛直縮尺1/159であり、模型は瀬戸内海全域を含み、外洋に通ずる紀伊水道、豊後水道、関門海峡に三つの起潮装置が設けられている。本実験では、起潮装置に境界条件として瀬戸内海で最も卓越している分潮であるM2潮を設定した。
流動環境への影響が検討された大阪湾の地形は、ほぼ現在の地形と構想されている埋立が実現されたと仮定した場合の将来の地形の2ケースであり、それぞれをcase0,case4と呼ぶ。case4の地形は、case0の地形に神戸空港と関西国際空港の全体構想に係わる埋立地形を付加したものである。また、検討された流動環境の内容は、潮汐・潮流、潮汐残差流、海水交換特性などである。
水理模型の水位は触針型水位計によって測定した。水位の測定期間はM2湖の周期で5周期間とした。測定された毎秒の1411個の水位のデータを解析した。また、水理模型において電磁流速計によって水深約4cm(現地換算約6m)の流速を測定した。水位と同様に、流速の測定はM2湖の周期で5周期間行い、毎秒の1411個の流速のデータが解析された。なお、流速計の零点を補正するため流速のデータは次のような処理を行った。実験前と実験後に静止水の流速の測定をM2潮の周期で1周期間行い、その出力の平均値を求め、実験前と実験後の静止水の流速計の出力値とした。実験前の静止水の出力値から、実験後の出力値へ時間的に直線的に変化する値を求め、これを実験によって測定した流速のデータから差し引くことによって、流速計の零点の補正とした。
また、水理模型内の氷粒子の移動は、比重0.92、直径6cmの浮標ボールを、TVカメラによって撮影し、これを追跡することによって測定した。
3. 実験結果
3−1. 潮汐
M2潮の潮汐の振幅と位相は、毎秒の1411個の水位データを最小自乗法で解析することによって求めた。潮汐の振幅は現地換算して表すことにする(以下、水理模型実験で得られた数値は、原則として現地換算して表すことにする)。潮汐の位相は紀伊水道の起潮装置の制御用の水位計の示す水位が満潮を示した時からの遅れで表す。

 

 

 

 

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