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1. 諸言
浮遊式海洋構造物の開発に当たっては、理論的・実験的研究を重ねて、運動性能・構造強度の検討を行う。最終的にはこれらの研究成果に基づいて、計算プログラムを作成し、与えられた環境条件の下で稼動(Working condition)、極限時(Survival condition)の性能・安全性の確認を行った後に実機の制作にかかる。
浮き漁礁などの小型浮遊式海洋構造物の開発に当たっても、連動・構造応答の推定法の確立が急がれている。しかしながら従来の実績のある石油掘削用リグに代表される大型浮体に比較して、相対的に入射波が大波高となるので非線形影響が大きく、そのための計算プログラムの開発とその後の精度確認のために実談が重要である。
また、このほかにも大水深海域に係留された浮遊式海洋構造物の運動計算法の難しさは石油掘削リグなどのような場合に比較して、係留ラインの全体システムに占める割合が格段に大きいことにもよる。すなわちリグの場合は係留水深はおおむね2〜300mであるのに対して、浮き漁礁や海洋観測用ブイステーションのような場合は1000〜5000mである場合が多い。またリグの排水量は数万トン程度になるが、これらの構造物の場合はせいぜい100トンまでである。この事を考えると小型構造物における係留ラインの運動力学的な重要性はリグの場合と比較にならないことが良く理解出来る。
本報告では大型浮き漁礁の連動計算法、ランプドマス法による係留ラインの動的挙動と変動張力の数値シミュレーション法について報告し、圧電振動ジャイロと3軸加速度計の組み合わせによる6自由度連動計測装置を用いた沖縄南方海上における海上実験の結果と計算結果の比較について報告する。海上実験では波は浮体の近傍に設置されたウエーブライダー型の波浪ブイで計測した。またブイ近傍に設置した潮流計の一点時系列計測結果とHFレーダによる表面流遠の面的計測結果を比較検討することによって、レーダによる面的観測の有用性を示す。さらに、浮き漁礁の本来の日的である集漁効果について考察し、浮き漁礁のマグロ漁獲への有効性を示す。
2. ブイの運動応答の計算法について
係留系との連成が強いために、通常行うような周波教領域での解法は実用的ではないので、時間領域での数値解法による1)。連動方程式は次の様に表わされる。

144-1.gif

144-2.gif

但し
ρ:水の密度
W:浮体の排水量
M:浮体の質量
AW:浮体の水線面積
J:浮体の慣性モーメント
GM:浮体のメタセンター高さ
aXX,aZZ:前後揺、上下揺に対する浮体の付加質量
aθθ:浮体の付加慣性モーメント
bXX,bZZ,bθθ:前後揺、上下揺、ピッチに対する浮体の造波減衰力係数
aXθ:前後揺の付加慣性モーメント連成項
bXθ:前後揺の造波減衰力係数連成項
bθυ:ピッチに対する浮体の粘性減衰力係数
AX,AZ:浮体のX方向、Z方向投影面積
CDX,CDZ:浮体の前後揺、上下揺の抗力係数
u,w:氷粒子の水平方向、鉛直方向速度
FXW,FZW,FθW:前後揺、上下僑、ピッチに対する線形な浪強制力
FXD,FZD,FθD:前後揺、上下揺、ピッチに対する変動波漂流力
TX,TZ:水平方向、鉛直方向の係留銀張力
Tθ:係留銀張力によるモーメント
浮体の流体力係数は三次元特異点分布法を使って計算し、粘性減衰力係数は実験より求めた。左右揺に対する定常波漂流力は実験より求め、変動波漂流力の計算はHsuの方法に従った。係留鎖張力TX,TZ,Tθはランプドマス法で計算した2)。
不規則波中での運動を計算する場合には入射波毎に流体力係数が異なる。しかし、計算が極めて複雑になるので、付加質量、造波減衰力係数などの流体力係数を代表周波数(平均波周波数)における値で固定して計算した。ブイの場合はその直径に比べて、入射波の波長が長いので、この近似は大きな誤差を生じない。
3.実海域での運動計場実業
実験対象の浮体はFig-1に示す浮き漁磯ニライ号であ

 

 

 

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