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高分子添加による円管内海水流の摩擦抵抗低減効果とその機械的劣化について

Drag Reduction of Polymer Addition to Pipe Flow and Degradation of its Effect
熊谷輝雄, 吉田稔, 境喜範*
(東京理科大学理工学部機械工学科)
Teruo KUMAGAI
Minoru YOSHIDA
Yoshinori SAKAI
Department of Mechanical Engineering
Science University of Tokyo, 2641,
Yamazaki, Noda City (278), Japan
Key Words: Fluid Dynamics, Pipe Flow, Polyethylene Oxide, Polymer solution, Drag Reduction, Stirring, Flow Visualization
ABSTRACT
The effect of PEO (polyethylene oxide) addition on the frictional loss of sea-water flow through circular pipe and the degradation of its effect by pumping or by stirring are studied experimentailly. The effect of PEO addition becomes higher according as the moleculer weight of PEO becomes larger. The effect of PEO addition on the reduction of fictional loss is degraded approximately 36 % after stirring by centrifugal pumps. The flow visualization using tracer method reveals that PEO addition does not change the velocity profile of laminar flow in a circular pipe, while that change mean velocities and fluctuations of turbulent flow in the circular pipe. The stirring by centrifugal pumps cutts long chains of PEO molecules shortly and degrades the effect of PEO addition on the reduction of frictional loss.
1. はじめに
1980年の深海鉱物資源船「第二白嶺丸」竣工以降ハワイ沖深海底に堆積しているマンガン団塊採鉱システムに関する我が国の研究にも一段と拍車がかかり多大な関心を集めてきている1)。 特に、1994年7月に国連海洋法条約実地協定を定める決議が国連総会で採択され、日本がハワイ南東沖の約75,000平方キロメートルの鉱区を認定された2)ことは特記に値する。これによりハイテク産業の多くに欠かせないにも拘わらず輸入に頼らざるを得ない希少金属資源が確保されたからである。 他方、最近コバルトリッチクラストや熱水鉱床が南鳥島周辺をはじめとする我が国経済水域内で次々と発見され3)、これら有用鉱物資源の回収利用にも熱い視線が注がれるようになってきている。 数千メートルの深海からの有用鉱物資源の回収技術は今後世界中で必要とされると考えられるが、未だ人類の未到技術と言ってよい。 実現にはまだまだ地道な努力を要するとは言え、実現に向けて努力を傾注しておく必要があることをを強調しておきたい。
深海底堆積有用鉱物資源の揚鉱1)ばかりでなく、海洋を挟む大陸間石炭流送などのように固体群を長距離に亘って管流送しなくてはならない場合には管摩擦損失が大きくなるためにその低減が重要となる。管摩擦損失低減の方法としてはPEO(ポリエチレンオキサイド)などの高分子添加剤の低濃度添加がよく知られている4)-10)。 他方、環境汚染の視点からは高分子添加剤使用時にはその性能を十分に発揮し、使用後には攪拌などの簡単な手段で速やかに元の流体に戻すことのできる高分子が望ましいと考えられる。これらの事情を考慮すると、メダカ等の生体には無害で攪拌に比較的弱いPEO11)-14)は望ましい高分子であるということができる。しかし、PEO希薄溶液の管摩擦低減効果とその機械的劣化に関しては未だ不明の部分が少なくない。
以上の事情を考慮して本研究では水道水に市販の塩を重量濃度で3%加えた塩水(以下簡単のため人工海水と呼ぶ)に高分子添加剤PEOを添加したPEO希薄溶液の管摩擦低減効果とその攪拌による機械的劣化を調べることを目的とする。先ず、水道水と人工海水に10〜100ppmの濃度で3種類のPEO(PEO-1、PEO-8、PEO-18)を添加したPEO水溶液の円管摩擦係数を求めてPEO添加による管摩擦損失低減の効果を調べる。次いで、PEO水溶液を2種類の攪拌機と2種類の遠心ポンプ攪拌した場合の管摩擦低減効果の機械的劣化を調べる。 また、管摩擦低減効果とその機械的劣化の原因を明らかにするために各種PEO水溶液の円管内流れを水素気泡法とトレーサ粒子法で可視化して検討する。

 

 

 

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