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閉鎖性海域と環境創造

ENVIRONMENTAL CREATION IN ENCLOSED BAYS
堀江毅
神戸大学工学部建設学科
Takeshi HORIE
Civil Engineering Department
Faculty of Engineering
Kobe University

 

Keyword: Enclosed Bay,, Environmental degradation, Marine pollution, Environmental remediation

 

ABSTRACT

Most of enclosed bays in Japan are utilized as the area of marine transportation and fishery activities, owing to the calmness of seawater free from high waves and strong current. The Bays are easily polluted by organic maters mainly due to the industrial and urban sewage. From summer to early autumn, red tides, blue tides and masses of oxygen-deficit water develop. As a result, the quality of the water and the bottom sediment deteriorate. The number of bathing resorts and the prevalence of marine leisure activities such as shell gathering are decreasing year by year. Over the past decade, the fishing industry has also suffered. Consequently, a wide range of methods of remediating polluted bay must be adopted. Several methods for restoring the seawater quality are discussed from the viewpoint of profitability and feasibility.

 

1. はじめに

わが国の東京湾、伊勢・三河湾、大阪湾などの閉鎖性海域は、波、流れが自然のままに適度の大きさを保ち、古くより、海上交通や漁業の場として地域の生活を支えてきた。しかしながら、地域の経済、社会の発展とともに、沿岸部や都市部の開発が進み、人口や産業が集中するに従って、海域環境の悪化が顕在化し、極端な場合には赤潮や青塩が発生するなど、自然の海本来の恵みを受けることが困難になってきた。
このような情勢のもとにあっても、臨海部への集中傾向はなお根強いものがあり、各種のウォータフロント計画が打ち上げられているが、これらの大半は陸側からみた開発計画であり、陸からの発想が支配的である。
そこで今回は、海側からみた発想として、海域環境の基本である閉鎖性海域の汚染海水の浄化にしぼってその現状と課題を整理する。
2, 閉鎖性海域の水環境
わが国の海洋の汚染は依然油漏出によるものが過半数を占める状態で、これは油取扱い側の技能、熟練度に基因する一方、モラルに訴えるべき性格のものもある。油の取り扱いについてさらなる規制をする一方、漏出油の処理対策を徹底しなければならない。
次いで多いのが赤潮の発生件数である。ここ数年、赤潮の発生件数は一時のピークを下回るようになったけれども、赤潮の継続日数は増加している。
東京湾、三河湾などで発生する青潮も底層貧(無)酸素水の湧昇であり、赤潮とともに海水の富栄養化と関連している。今日、海域の汚染でもっともやかいなのはこの富栄養化の問題であり、海域の窒素やリンをいかにコントロールするかが重要である。わが国にはこのように水質の悪化が進行している閉鎖性海域が多く見られ、早期の対策を必要としている。
3. 閉鎖性海域の富栄養化の要因
富栄養化とは文字どおり海水が窒素、リンなどの栄養塩過多になることであって、植物プランクトンが異常増殖したり、有機物の分解に多量の酸素を消費するようになる。
本来地球は、水、物質(栄養塩を含む)、エネルギーがいきもの(生態系)と地球との間を循環して成り立っている。循環の各過程で過不足を生じないのが自然の摂理であり、循環からはみだしたものが汚物(汚染物質)となる。それは自然現象よりも早い速度であったり、自然が取り込めない物質や状態にしてしまうことを意味する。人間の諸活動がことごとくこの汚染物質の発生と蓄積とに関与してきた。

 

 

 

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