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大阪港における環境創造とマリン・コリドール構想

Osaka Bay Marine Corridor Project; A Model for Sustainable Development

 

村田武一郎 ※1 細田龍介 ※2 近藤健雄 ※3 清水紀彦 ※1 室田成望 ※1
Buichiro Murata Ryusuke Hosoda Takeo Kondo Norihiko Shimizu Shigemochi Murota
※1大阪湾新社会基盤研究会 ※2大阪府立大学 ※3日本大学

 

KEYWORDS

Marine Environment in Osaka Bay, biodiversity. Marine based infrastructure, Restoration of enclosed sea environment. A model for sustainable development

 

ABSTRACT

The Marine Corridor Project is a bold and visionary concept that is expected to transform Osaka Bay into a trade and industry center, marine and environmental research site, international cultural and intellectual center, and prototypical city of the future. The Marine Corridor is a marine based transportation, utility, and telecommunications mega-infrastructure corridor linking ten urban centers now located on the bay's perimeter.
Also, this infrastructure is restoring marine environment of Osaka Bay. Despite the economic success of greater Osaka. or perhaps because of it. Osaka Bay now suffers from severe environmental problems, including deterioration of water quality, pollution of sea-bottom sediment, and inability of natural ecosystem to purify the bay.
The project will give high priority to prevailing concerns on the impact of natural hazards such as earthquakes. tsunamis, and typhoons. This paper describes more detail of Marine Corridor Project concept for the specific aims at each developing levels, function of total system, construction system. and marine environmental restore system.

 

1. はじめに

私達は生命のインキュベータであり、生物の多様性(biodiversity)の宝庫であり、人間にとって極めて重要な環境財である大阪湾の意義を、長期間にわたって無視し続けてきた。沿岸陸域の経済活動を優先し、自然環境と共生する都市づくりを進めてこなかった。
その結果、大阪湾の環境は悪化の一途をたどり、沿岸陸域での諸機能の集中による効率化を求めた都市づくりは、阪神・淡路大震災によって弱さを露呈した。
大阪湾の意義を見つめ直し、21世紀地球社会に対してサステナブル・デベロップメント(持続可能な発展)のモデルを提供し得る大阪湾圏域づくりを積極的に進めていかなければならない。
本論では、大阪湾の環境状況を把握し、今後の大阪湾において環境創造(保全を含む)を図るに際しての考え方と方針を明らかにするとともに、それを具現化するツールであり、21世紀地球社会の智慧の都「関西」の形成および大阪湾環状都市の構築のメガ・インフラストラクチャーの役割を果たすマリン・コリドールについて示す。

 

2. 環境財「大阪湾」の危機

かつての大阪湾は豊饒の海であった。大阪湾が多種多様な魚介類が獲れる豊かな海であった理由は、陸域から河川や地下水脈を通じて栄養物質を含む淡水が供給され、良好な汽水域が形成されるとともに、砂浜、干潟、岩場など多様性に富んだ水際線が存在しことが生物の発生と生育に望ましい環境を提供してきたからである。
しかしながら、このような環境の大部分は、経済発展を優先した私達の活動によって失われてしまい、大阪湾の水質・底質は悪化し、生態系による水質の自然浄化機能は低下してしまっている。
大阪湾では、陸域の人間活動を支援するために、実に多くの埋立が行われてきた。江戸時代から大正時代にかけて4,600haが埋立てられ、昭和期以降では1991年までに7,000ha(工事中を除く)が埋立てられている。この埋立によって、Fig−1からわかるように、大阪湾奥部では、水深5mまでの海域の大部分、水深10mまでの海域の半分以上が失われた。
その一方で、陸域からの排出物は、大阪湾に自然浄化能力を超えた負荷を与え続け、これらの結果として、大阪湾の東半分は、透明度が5m以下、大量のヘドロ堆積、底質のCOD30?/l以上、総窒素、総リンが極めて多いという状況になっている。環境悪化状況は、湾奥部へ行く程により悪くなっており、湾奥部では、溶存酸素飽和度(DO)が2?/l以下である。このような状況から、大阪湾においては、生物の多様性が損なわれつつあり、漁獲面からは浮魚が中心で、底生魚介類が獲れなくなっており、特に湾奥部では底生生物相が貧困である。
ちなみに、水産環境に関する水質基準が提案されており、それによれば、CODは1?/l以下、D0は6?/l以上、透明度は5m以上が必要とされている。

 

 

 

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