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天橋立における海浜環境の維持対策

Countermeasures against beach erosion on the Amanohashidate Coast
富樫宏次*、寺尾忠勝**、山下正貴***
H. togashi*、 T. terao**、 M. yamashita***
京都府港湾課、**・***京都府港湾事務所
*Kyoto Prefectural Port Division, **・***Kyoto Prefectural Port Office
beach erosion, countermeasure against beach erosion, sand bypassing, shore protection
The Amanohashidate Coast, which lies deep in Miyazu Bay along the west of shore of the Tango Peninsula in the north of Kyoto Prefecture, is a sand spit extending 20 - 170m in width and 3.6km in length. The coast has the predominant direction of sediment transport. Therefore, when the longshore sediment transport was interrupted on the updrift side by construction of breakwaters in two harbors, coastal erosion inevitably and immediately took place on the downdrift side. Since 1951, investigation had carried out, and the following three methods were in turn applied as countermeasures against beach erosion on the coast: groin works, artificial nourishment method and sand bypassing method.
Groin consisting of 60 small and large ones had been constructed over about 25 years since 1951. Through 1979 to 1985, beaches had been filled with approximately 80,000m3 of nourishment sand simultaneously with groin works. Furthermore, after 1985, application of sand bypassing method introduced first in Japan as examined and resultingly the method was used on a full scale after implementation of bypassing. The sand bypassing project on the Amanohashidate Coast results to protect the shoreline on the coast having the scenic beauty created by pine-tree lines and white sand from beach erosion and has attained success by and large .

1. 緒言

宮津港天橋立海岸は、日本三景として、松島、宮島、と並び称される日本でも数少ない美しい白砂青松を有する海岸である。また、天橋立海岸はわが国で最初にサンドバイパス工法が導入された海岸であることでも知られている。この海岸は、一方向性の卓越した沿岸漂砂の堆積作用により形成された典型的な砂費地形海岸である。そのため、海岸上手において沿岸漂砂の遮断により漂砂の連続性が絶たれた場合には、下手の海岸は直ちに侵食される宿命を有している。実際、この海岸の砂浜の侵食は、海岸上手に防波堤が建設された直後に生じており、一時はその存在すら危ぶまれる状態であった。京都府は、その防止策として天橋立からその上手海岸にかけて1951年から多くの防砂突堤を設置した。しかし、天橋立海岸の侵食をくい止めるには至らず、「天の串刺し」と酷評された。そこで、1979年から貴重な景観を保持し、さらに海浜レクリェーションの場の確保に配意した抜本的な海浜整備を模索するために、サンドバイパス工法の導入を検討、実施した。この工法は、漂砂と海浜変形の観点から極めて理にかなった方法であり、天橋立海岸のように景観美そのものが保全目標の一つになっている場合には、非常に有効かつ適切な工法となっている。
現在の天橋立海岸は、この対策が功を奏し、美しい砂浜を形成するに至っている。
サンドバイパス工法の導入により、砂浜の回復には一応の成果をみた。しかしながら、突堤群によって形成された汀線形状はノコギリ歯状となってしまったため、新たに景観面での課題を残すことになった。京都府では、このノコギリ直状の汀線をより自然で滑らかな連続性のある汀線形状に近づけるために、1990年より汀線改良工法の検討および現地における施工を実施している。本報告は、天橋立海岸の維持を目的として導入されたサンドパイパス工法の変遷、適用状況をとりまとめるとともに、現在検討中である汀線改良工法の実施経過を紹介するものである。

2.天橋立海岸の侵食過程とその対策の経緯

2-1. 天橋立海岸の概要
天橋立海岸は、図-1に示されるように京都府北部の丹後半島東岸にある宮津湾内に位置し、宮津湾と阿蘇海を隔てるように江尻地先から細長く延びた砂質地形の砂浜海岸である。この砂階は、南西方向に約3.6?、幅20〜170mで形成されている。宮津湾と阿蘇海は文珠の切戸と文珠水路のよってわずかに通じており、天橋立海岸

 

 

 

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