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生物との共生技術および擬岩工法による空間演出

Technique accommodating attached organisms and performance by artificial rock
綿貫 啓、長谷川 実
株式会社テトラ
Akira Watanuki, Minoru Hasegawa
TETRA Co.,Ltd.
Keywords : Attached organisms, Port and harbor structure, Seaweed ; Artificial rock, Landscape

ABSTRACT

Two methods that harmonized on construction of harbor facilities etc. with environment were shown. The first method is about symbiosis with port structure and marine organisms. The results about investigation data of attached organisms on the port structures collected by Port Agencies and their relationship with waves were re-analyzed. Seaweeds dominated on slope structures and in areas where the waves were relatively big. Whereas, attached animals dominated on upright structures and in areas where the waves were small. It was also found that the species number of attached animals increased in seaweed bed. Then we experimented with a new method in which we were able to grow a bed of seaweed on an armor unit. The settlement of kelp species was promoted on block surfaces with cm-order grooves. Proliferation is induced by establishing a material which supplies ion that is needed for the growth of the algae.
The second method is artificial rock construction which raises amenity of harbor space. This allows the appearance of the port structure to look natural among its surroundings. We include many different landscape designs in which the artificial rock construction was applied such as breakwater, jetty and revetment, etc.

1.はじめに

沿岸域で行われる開発行為には、生物との共生や景観の保全が重要となってきている。運輸省では、環境と共生する港湾「エコポート」のコンセプトに、「自然にとけ込み、生物にやさしい港」、「アメニティーが高く、人々に潤いとやすらぎを与える港」をあげている。漁港建設においても、自然と調和をとることを重要課題に上げている。
生物との共生の視点では、港湾・漁港・海岸保全施設等の浅海域の開発において、藻場・干潟の保全や創造が注目されている。防波堤や護岸が磯釣りの良いポイントになるように、構造物は海岸地形に変化を与え、藻場が形成され、魚類などの生物を集めることが多い。しかしながら、これらは結果として、生物が付着・蝟集したものである。生物との共生を積極的に推進するには、構造物の形式、波力等の物理条件、水質、光、基質の状態、生物間の競合等の環境条件と生物との関わりを把握して生物にやさしい構造物の設計ができることが望ましい、そこで、過去に実施された港湾等の構造物上の付着生物の調査結果を用い、波浪条件および構造物の構造形式と付着生物との関係を再整理し、海藻類藻場を中心とした港湾構造物上の付着生物に、これらがどのような影響を与えるか検討した。
さらに、消波ブロック等の消波工に藻場が形成されれば、生物相が豊かになるという視点で、より積極的に藻場を形成させる手法として、表面加工および藻類の生長に必要な元素をイオンで溶出する素材の応用、藻場造成上の留意点についてまとめた。
一方、港湾・漁港域のアメニティーを高めるための、良好な景観を与えるという観点では、構造物の修景があげられる。構造物を岩や岩場に修景する擬岩工法がある。従来の擬岩は、公園、水族館、動物園等のディスプレーの一種として、外力条件の厳しくないところに用いられてきたが、材料や施工方法を新たに開発し、港湾、海岸等の外力条件の厳しい所での使用が可能となった。そこで、防波堤等の外観を擬岩で修景し、空間を演出する手法を報告する。

2.生物と波浪、構造形式の関係

2-1.波浪条件と付着生物の関係
港湾構造物等に付着する生物の生息分布を規定する要因のうち、最も大きな要因として、波浪と構造形式を選定し、過去に運輸省等で実施された全国で9つの港湾、空港、海岸の生物調査結果(Table-1)を共通的視点で見直し、港湾等における生物の分布の一般的傾向を、これらのパラメタで定量化することを試みた。2) 3)
波高は1年確率波高を用い、構造物の堤前波高を回折、浅水変形を考慮し算出した。また、生物調査結果は水深帯、調査時期、調査回数等が一致してないので、各地点ごとに単純平均し、出現量は1?当たりに換算した。

 

 

 

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