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バルト三国の現況と開発援助に関する考察

 

1.バルト三国の運輸基盤施設の現況

 

(1)港湾、鉄道、空港の基本的ネットワークは、質的水準を別にすればそれぞれの国土、経済、産業、貿易、人流、物流などの規模、特質から考えて、概ね完成しているといえる。

 

(2)港湾については、旧ソ連時代に整備された施設がほとんど残っており、防波堤、航路、岸壁などの基本施設の容量は高いポテンシャルを持っている。しかし、岸壁の構造、荷役機械の形式、荷役・積み替えシステムなどが主として軍需物資の取り扱いを目的に設計されていること、全体的に老朽化が進んでいることもあって、コンテナ中心とする現状での物流需要に対応できないケースが多々見られる。

 

(3)港湾貨物流動はバルト三国の背後圏を形成する国々、とくにロシア、ポーランド、旧ソ連から独立したCIS諸国によるトランジット需要に大きく左右される状況にある。これは、自国の経済規模が小さく各国の輸出入に伴う貨物流動が少ないこと、輸送コスト、経由国との関係などから背後諸国がバルト海経由の輸送を重視していることが原因である。将来貨物の予測は極めて流動的であるが、各国とも背後圏へのトランジットを自国の港湾経由で行うべく強気の姿勢で港湾施設の整備を図る意向である。

 

(4)鉄道についても、基本的なシステム、幹線のネットワークは一応整っているものの軌道、信号、駅舎、積み替え施設、車両などが老朽化、旧式化している。このため、走行速度、安全性、定時性、確実性など基本的なサービス機能が大幅に落ちており、背後圏のトランジット需要に応えるためには相当の再投資が必要である。このような状況は国によって多少異なっているが、少なくとも主要港湾と内陸部を結ぶ幹線整備の必要性は三国とも十分認識しているところである。

 

(5)空港施設は各国とも比較的よく整備されているが、海外からの観光客などの増加を考えると、近い将来、ターミナル施設の規模が不足することが予想される。滑走路は、旧ソ連から独立後、概ね3000m級に整備されているが、航行援助施設、無線施設などの詳細についてはさらに調査が必要である。

 

 

 

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