11.1.3アルミ船の腐食
アルミ船に使用されているアルミ合金は、耐食性に優れている材料であるが、アルミニウム自体はイオン化傾向が大きく腐食しやすい金属でもある。
アルミ合金は、大気中と海水中では次のような違いがある。
(a)大気中:アルミ合金表面は空気中の酸素によって作られる酸化皮膜(保護皮膜)に覆われるため耐食性は維持される。
(b)海水中:電解質溶液に接すると酸化皮膜が塩素イオンClなどによって破壊されるため腐食が発生する。
アルミ合金の主な腐食の発生形態を挙げると
(1)孔食(局部腐食)
アルミ合金によくみられる腐食は、孔食でピッチングとも呼ばれている。この孔食は、塩素イオンCl-が存在すると、高湿度の大気中又は水中でも発生する。しかし、ある期間が過ぎると自己抑制作用が働き、1〜2年後はほとんど進行しない。
(2)隙間腐食
アルミ合金相互又はアルミ合金と非金属の接触面にわずかでも隙間があると、雨や海水あるいは気温の変化による結露による水が毛細管作用によって奥の方に浸入し、隙間の内外で溶存酸素量の濃度に差ができる。この結果一種の電池作用により、酸素量の少ない隙間の奥でアルミ合金が陽極となり、アルミイオンAl3+を放出するため、その周辺に白い模様の腐食が発生する。
(3)電食
異なった二つの金属を電気的に結合して電解質の溶液の中におくと、両者の間には電位差があるので、アルミ合金は陽極となってアルミイオンAl3+を放出しながら腐食していく。