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書が作成された。これと同時期、国際電気通信連盟(ITU)の関連組織でも同様の研究を進め、1971年の世界無線通信主管庁会議ではL-バンドの海事衛星業務用の周波数割当を決定するなどの役割をはたしてきた。これらの動きの結論として、IMCOは、1975年4月に国際海事衛星組織の設立に関する政府間会議を招集し、以後併せて3回の政府間会議、3回の中間作業部会、法律専門家会合におけるソ連と東欧を含む40数か国の協議の結果、1976年9月に国際海事衛星機構(インマルサット)に関する国際条約(政府間の取決め)とその運用協定(出資をする通信事業体の取決め)が採択された。これらの条約と協定は、関係各国の批准その他の手続きにより、1979年5月にはその発効要件を満たし、インマルサットは設立された。我が国の場合、通信事業体には国際電信電話(株)が指定された。
この結果、インマルサットは、ロンドンに事務局を置き、50数か国の参加をえて今日その衛星システムを運用しているとともに、IMOの会議にもオブザーバーとして参加している。
(2)インマルサットの概要
インマルサットの設立目的は、その条約の第3条に明示してあり、海事通信の改善のための宇宙部分を提供することによって、遭難及び人命の安全に係わる通信、船舶の効率的運航と管理、海事公衆通信業務、無線測位の能力改善に貢献すること、となっている。しかし、最近、航空機の衛星通信に対する要求が拡大しており、それに伴って海事通信及び実行可能なときは航空通信の改善に関し条約改正が行われた。更に海事通信及び実行可能なときは航空通信、陸上通信及び海域部分でない水域での通信の改善と、二度の改正が行われた。後者については未だ発効を見ていないが、海事衛星通信を主体とするものの、航空移動衛星通信と陸上移動衛星通信についてもインマルサットの衛星が使用できることになった。これらに伴って、機構の名称の変更も論議されている。また、この条約の改正以前にも、その条約の例外規定により、南極の昭和基地、北海油田など船舶外での使用も例外として認められていた。
インマルサットの発足の当時は、すでに前述したアメリカのマリサットシステムが業務を実施しており、その他に欧州各国の共同宇宙開発機関である欧州宇宙機関(ESA)も独自の海事衛星MAROTSを1977年頃に打上げる予定でその開発を進めていた。インマルサット条約の第8条では、そのシステムを保護するために、締結国が、機構と同じ目的の別の衛星を提供又は使用しよう

 

 

 

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